東京五輪世代U-22合宿開始。小川航基が抱く危機感とは?
U-22コロンビア戦へ向けて、11日から広島市内で始まった合宿初日を終えた小川は、胸中に抱く思いを「危機感」という言葉に集約させた。直近のリーグ戦で2試合連続ゴールをゲットして合流しているが「正直、まったく物足りない」と、思い描いてきた姿と乖離していると打ち明けた。 「想像していたのは僕がゴールをバンバン決めて、チームが2位くらいにつけて、J1へ自動昇格させたのは僕だ、と言われる活躍をするくらいのイメージで入ったので。その意味ではインパクトというものは、まったく与えられていないと思っています」 決してJ2を甘く見ていたわけではない。続けて試合に出場する感覚や調整方法との向き合い方を覚えられたことは、ポジティブにとらえている。それでも現時点で16試合、1229分間にわたってプレーしながら、7ゴールしかあげられていない自分が歯がゆい。 J2戦を欠場した2試合は9月および10月にU-22代表へ招集されたことに伴い、チームを留守にしたためだ。コロンビア戦前日に敵地で行われる鹿児島ユナイテッドFC戦も必然的に欠場となるが、クラブ史上初のJ1昇格およびJ1参入プレーオフ進出へ向けて、2位の横浜FCに勝ち点6ポイント差の4位につけている仲間たちを信じて、日の丸を背負った目の前の戦いに集中する。 「(鹿児島戦で)しっかりと勝ち点3を積み上げて帰ってきてもらって、(24日の)最終節で僕が点を取って勝つ。2位とは勝ち点がちょっと離れているけど、それでも上位の結果次第では(自動昇格も)狙えるし、(ダメでも)しっかりとプレーオフ圏内に食い込んで、最後の1枠を勝ち取りたい」
東京五輪に臨む代表チーム18人でフォワードは最激戦区になる。チームが結成された2017年12月以来、一貫して[3-4-2-1]システムが採用されてきたことを考えれば、2人のゴールキーパーを除いた16人のフィールドプレーヤーで、フォワード枠はおそらく「2」となるからだ。 22人が招集されたコロンビア戦で、フォワードには小川、前田、そして2021年の加入を前倒しして今夏にプロ契約を結んだ上田綺世(鹿島アントラーズ)が招集されている。前田と当時は法政大学3年生だった上田は、前述したコパ・アメリカ2019の舞台でもプレーしている。 さらにオーバーエイジ枠に関して、たとえばフル代表で不動の1トップを担う大迫勇也が所属するヴェルダー・ブレーメンと日本サッカー協会との交渉が合意に達すれば、フォワード枠をめぐる状況もまた激変する。アピールするしかないからこそ、危機感を糧にして精進を続けると小川は誓う。 「常に危機感をもてなくなったら、正直、サッカー選手としては終わりだと思っているので。目の前のオリンピック代表から落ちるかもしれないという不安ではなくて、その先にあるカタール(ワールドカップ)から逆算していくと、危機感しかないことになる」 韓国の地で2年前のU-20ワールドカップを戦ったメンバーから、久保やMF堂安律(PSVアイントホーフェン)、DF板倉滉(FCフローニンゲン)ら6人がヨーロッパへ移籍。けがで戦線離脱中のDF冨安健洋(ボローニャ)を除く5人が、今回のメンバーに名前を連ねた。 特に10日のビジャレアル戦で待望の移籍後初ゴールを豪快なミドルシュートで決めた、久保の映像はツイッターなどを介して「嫌でも回ってくる」と、苦笑しながら何度も見たと明かした。 「建英のかたちが出たというか、本当に素晴らしいゴールだったと思います。建英だけじゃなくて、律や冨安、滉君たちからも刺激をもらっているし、フル代表も経験した彼らと一緒にプレーし、いろいろと話をすることで、僕も負けずにそこ(フル代表)へ食い込んでいきたい」 メンバーのなかには今年のU-20ワールドカップを戦ったMF菅原由勢(AZアルクマール)、年代別の代表に無縁だったMF食野亮太郎(ハーツ)と、今夏に海を渡った後輩たちも含まれる。若手の海外移籍ラッシュが続くなかで、身長186cm体重78kgの大型ストライカーは「急がば回れ」の決断が正しかったことを証明し、自身の未来を切り開くためにも、コロンビア代表戦で貪欲にゴールを狙う。 (文責・藤江直人/スポーツライター)