枢軸を形成し西側を脅かす「中露朝イラン」、今後の国際秩序の行方を左右する6つの「スイング国家」とは
■ カギを握る6つの「スイング国家」 中・露・北朝鮮・イランの協力関係はウクライナ戦争以前から拡大していた。戦争でモスクワはロシアの銀行に凍結されていた数百万ドルの北朝鮮資産を解放した。イランは3700機以上の自爆攻撃ドローンを、北朝鮮は250万発以上の弾薬をプーチンに送る。枢軸の連携は加速する。 米欧が構築した国際システムの不満分子に過ぎなかった4カ国はますます共通の利益を認識するようになり「台頭する枢軸」として軍事・外交を連携させる。国際社会の地政学は根本的に変わりつつある。そんな中、フォンテーヌ氏らは、一定の国力を持ち、まだ対外政策の方向性が明確に固まっておらず揺れ動いている“第3勢力”に対するアプローチの重要性を説く。 「陣営双方が世界中で影響力を競い合い、重要な国々を自国の側に引き寄せようとするだろう。ブラジル、インド、インドネシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコの6カ国は地政学的に十分な重みを持ち、将来の国際秩序の方向性を左右する」 米国の政策立案者は貿易インセンティブ、軍事的関与、対外援助、外交を駆使して、こうした「スイング国家」が「台頭する枢軸」の軍事基地を受け入れたり、技術インフラや軍事装備にアクセスしたり、西側の制裁を回避する手助けをしたりするのを阻止するべきだという。
■ 日本ができる最善策は自国の安全を確保することだ 日本はどう立ち回るべきなのか。『プーチンの戦争:チェチェンからウクライナまで』の著者でシンクタンク、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマーク・ガレオッティ上級研究員に筆者は日本のウクライナ政策について質問した。 「ロシアと北朝鮮の関係が深まっている。ロシアと北朝鮮との関係は依然として深く実利的な関係である。西側諸国がウクライナに弾薬を与えているのとは異なり、北朝鮮はロシアに弾薬を売っている。これがすべてを物語る」 「ロシアはいま、朝鮮半島を不安定化させたくはない。北朝鮮から余分の弾薬やその他の物資を提供してもらう必要があるからだ。平壌はその取引条件を決定する強い立場にある。金正恩とプーチンがロシア極東にある宇宙基地で会談した」 「ミサイル技術やロケット技術を巡って写真撮影の機会があったという事実は明らかなシグナルを意味していた。ロシアは本質的に、核目的で使用される可能性のある最小限の技術を北朝鮮に提供しようとしている。これはイランへの対応と少し似ている」 「私たちはこの関係の限界を認識しなければならない。日本から見れば、ウクライナ戦争は遠いところで起こっている話だと言える。優先順位は低い。その現実主義を認識しなければならない。北方領土や中国を巡る問題を考えると、日本ができることには明白に限界がある」 「日本ができる最善策は自国の安全を確保することだ。ロシアはウクライナだけを切り離して見ておらず、ウクライナを本質的に米国が支配する西側とのより広い政治的闘争における運動論的戦場と見ている。米国が太平洋に目を向ければ向けるほど、欧州から目をそらすことになる」
木村 正人