高知東生59歳が“自分の弱さ”をさらけ出せるようになるまで。「恥を知られたら負け」だと思っていたけど
分かんなかったら「ヘルプ!」のひと言が大事
――「生き直し」という言葉が出ました。いまは一度失敗すると、立ち直れないほど叩かれてしまうことが多いです。特にSNSはみんなと繋がれる文化ですが、叩きやすくもある。 高知:本当だよね。昔から人の不幸は蜜の味っていうし。自分の国の言葉をガキの頃から使ってきたけど、その重みを知らないことが多いよね。無責任で自分勝手な言葉だという自覚があれば気軽に吐けないし、吐いちゃダメ。 あと、叩かれるのはもちろん辛いけど、自分のことを振り返ってみると、他者を意識しすぎ、他者の評価を気にしすぎていたところがあったと思う。自分の魂が抜けていた。オレはこれをやってるのに、なんでそれに足る反応が返ってこないんだとか。だけど、それも自分の悪いクセ。「そうじゃない。他人じゃない。すべては自分なんだ」と気づけたとき、すっごくラクになった。それに本当の愛には反論する言葉が出ない。 ――本当の愛? 高知:本当の愛、情熱ってなんだろうと考えると、自分の先を行く仲間たちが、自分と本気で向き合ってくれているのが浮かぶ。その時間と労力のすごさ。他人なのに無償でだよ。そういう環境に身を置いて包まれていると、旧型の歪んだ認知を持っていたオレにも、新しいきれいな水がば~っと入ってくる。 いまでも歪んだ認知が顔を出すこともあるけどね。昔はそこの中での判断しかできなかった。でもいまは「やべえ! 旧型のクセが出てきた」と気づいてストップをかけられるようになった。そして自分でも分からないものがあるときには、先を行く仲間たちにさらけ出す。 ――その都度その都度、何度でもさらけ出していくことが必要ですか。 高知:そうだね。これもオレの歪んだ認知のひとつで、自分の恥を知られたら負けだし、すべて自分で片付けなきゃといった根性論、精神論が植え付けられていた。でもそうじゃない。簡単よ、分かんなかったら「ヘルプ!」。これを言えるようになった。 ――分からなくなったらヘルプ! 高知:自分の生き方をしっかり見つめて、認めて、弱さをさらけ出す。残りの人生をアップデートしながら生き直して、成長を楽しんでいこうと。そのためには安心してさらけ出せる環境がないとね。 <取材・文・撮影/望月ふみ> 【望月ふみ】 ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi
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