高知東生59歳が“自分の弱さ”をさらけ出せるようになるまで。「恥を知られたら負け」だと思っていたけど
2016年、覚せい剤と大麻使用の容疑で逮捕され、執行猶予判決を受けた高知東生さん(59歳)が、商業映画に復帰する。ギャンブル、アルコール、薬物、買い物、ゲームなど、実際の依存症者(アディクト)やその家族を多数起用した話題作『アディクトを待ちながら』の主演である。 依存症はれっきとした“病”であり、回復(リカバリー)が可能だ。依存症からの回復者たちのつくる文化を「リカバリー・カルチャー」と呼ぶが、当事者たちが演じる本作は、まさにこの病に立ち向かう人々をリアルに映し出している。 ⇒【写真】アザーカット 高知さんは自身の回復の道のりにおいて、物事の捉え方に悪いクセ(歪んだ認知)があったと語る。いま振り返る、逮捕から現在までの率直な気持ちとは。
「ないこと、ないこと言ってきた」マスコミ
――孤独になった時期もあったかと思いますが、X(旧Twitter)での発信などを含め、現在はご自身の考えを外に出しています。大きな転換があったのでしょうか。 高知東生(以下、高知):依存症の仲間たちと出会ったのは逮捕されて2年後。自分自身、家族がいたり商売もしていた(エステ店を経営していた)なかで起こしてしまったことで、整理することが山ほどありました。最初の1年間は、あっという間に過ぎました。 大変なのはそうしたことが終わってからの2年目です。24時間、何もすることがない。でもマスメディアは面白おかしく「別れた女房(高島礼子)が支える」とか「復縁する」とか、そんなことばかり言ってくる。 ――マスコミの記事はキツかったですか? 高知:これ以上もう家族に迷惑かけたくないし、「ないこと、ないことやめてくれよ」と。周りに残っていた数少ない人たちも、そうした記事に踊らされて「お前、1億円もらったの?」とかありもしないことを言ってくる。生活もできないくらいなのに「1000万、貸してくれよ」とか。いちいち説明するのも面倒くさいし、どんどん人間不信になって、壁が厚くなっていきました。そんななか「気持ち分かるよ」と寄ってくる人がいる。「いい人なのかな」と思ってお茶したりすると、そのうちに「金のカエルを買えば、あなたは明日からもっとラクになる」と言われて。ネットワークビジネスの広告塔にされそうになったこともありました。 ――心が弱っているなかで、そこに頼らなかったのは? 高知:なんですかね。家族や自分の大切な人たちが当たり前のようにいた環境を、オレはどれほど裏切ったんだと。そのことを深く重く感じていたから、そのぶん、そうしたところには行かなかったのかなとは思います。 ただ現実、生活ができないことは弱み。ある会社の社長に「うちで働けば」と言われたこともあって、頑張ったこともあったんだけど、何日かしたら「取締役会議でわざわざ傷持ちを入れる必要はない」となったと。「過去をさかのぼると、芸能人で結局何回もやっちゃう人がいる。そんなのに関わったら大変だ」と。その場では「誘ってくれてありがとう」と言いながら、家に帰ってから打ちのめされる。