ビッグネイキッドブームを牽引したホンダ“プロジェクトBIG-1”の軌跡〈CB1300SF〉
BIGなCBとBIGな企画
ビッグマック! ビッグサンダー! ビッグカツ!! てんちょー(筆者)もBIGになってバイクをもっと布教したい! そう、目標はホンダのBIG-1ぐらい大きくなきゃね。え、BIG-1って何って? ホンダを代表するビッグネイキッドである、CB1300スーパーフォアとそれを生み出した、偉大なプロジェクトの事だよ。 【画像】ホンダ“プロジェクトBIG-1”の軌跡×9枚 CBシリーズの顔と言っても過言ではない、このバイクの誕生には、開発者たちの熱い思いがありました。この記事ではプロジェクトBIG-1を追いながら、ご先祖のCB1000スーパーフォアシリーズからCB1300スーパーフォアシリーズまで、どういった経緯で進化していったのかを紹介していきます!
プロジェクトBIG-1の時代と変遷
────────── ネイキッドブームの到来 ────────── 1980年代後半、バイク業界ではレーサーレプリカの性能競争がピークを迎えていました。しかしその反動で、よりバランスの取れたロードスポーツバイクを模索する動きが生まれ、今日では「ネイキッド」として知られる、スタンダードなフォルムのカウルレスバイクが登場します。 ホンダは1989年に、CBR400RR由来で57psを発揮する、最新の4バルブ水冷直列4気筒エンジンを高剛性のダイヤモンドフレームに搭載するという、先進性を打ち出したスポーツネイキッド、CB-1を発売しました。しかし同時期に商業的に成功したのは、46psの昔ながらの2バルブ空冷直列4気筒エンジンをダブルクレードルフレームに搭載し、原点回帰路線を目指した、カワサキのゼファーでした。 今見てもメカメカしくてカッコいいし、運動性能も優れていたのにね…CB-1。ホンダとしても目論見が外れたことを受け、巻き返しを図ることになります。 ────────── プロジェクトBIG-1始動 ────────── CB-1の後継機種として、新たなネイキッドバイクの開発を始めたホンダ。そのスタイリング担当になった岸敏秋さんは「こういうバイクを世に出したい」と、CB-1の骨格に、伝説のロードゴーイングレーサーCB1100Rの燃料タンクを載せたスケッチを描きます。これが当時、デザイン現場の責任者だった中野耕二さんの目に留まり、非公式な形でデザインを進めることになりました。 ちょうど同じころ、中野さんはバイクユーザーから「ビッグバイクといえばカワサキのイメージ。ホンダにはバイクの選択肢は多いけど250と400の会社に感じる」という意見を耳にしていました。ミドルクラスでのレーサーレプリカの優位性が、逆にビッグバイクのイメージを希薄にしてしまう状況にあったんだね。うう、CB750はZ1より先に出てるって言うのに…。 折しも1990年は「国内で販売可能なのは750ccまで」という、排気量の自主規制が撤廃されて、免許制度の改正に向けた機運が高まっていた時期。ホンダ社内からも、商業的にビッグバイクが必要だという声が上がっていました。そんな中、中野さんはスポーツツアラー、CBR1000Fのエンジンを見かけた際に、無骨な美しさに惹かれ、このエンジンを使ったビッグバイクを作れないかと考え始めたのです。 そうして中野さんを中心に、デザインの方向性を同じくする、400ccと1000ccの新型ネイキッドバイクを作るという非公式な企画が本格化します。これが、後にBIG-1と呼ばれるプロジェクトの始まりでした。 ────────── スタイリングづくり ────────── そして、多くの開発者の目に触れられるよう、あえてデザイン室の一番目立つ場所で、クレイモデルづくりに取りかかった中野さん。自分たちの考えているバイクの良さに賛同してくれる人を、ひとりでも増やしたかったんだろうね。 シリンダーが立ち上がった、堂々とした水冷エンジンをダブルクレードルフレームに搭載することを想定し、CB1100Rに着想を得た巨大なガソリンタンクに丸目ライトと、クラシカルなイメージにまとめました。 また、「ライバルは750ccのバイクではなく、中古で手に入る過去のバイクと逆輸入車」という想定から、ホイールには前後18インチを、そしてリヤサスペンションは、過去のCBを思わせる二本セットをチョイス。粛々と、威風堂々としたBIG-1のスタイリングを中野さんは形にしていきました。 ────────── デビューまでは苦戦 ────────── しかし、満を持して開発会議にかけるも、営業的な観点から「これでは売れない」と、ボツの連続。正式採用の道のりは険しかったのです。流れが変わったのは、1991年のこと。先んじて正式な開発が進んでいた、CB400SFのイメージ訴求という位置づけで、東京モーターショーに1000ccモデルも参考出品されることになりました。 その反響たるや、開発陣が「自分たちとお客様は共感できている」と感じられたほど。“大きい、迫力がある”というインパクトが、来場者の心を掴んだのです。この高評価が追い風となり、CB1000スーパーフォアはようやく正式に開発をスタートすることができました。