なでしこジャパン W杯2連覇はできるのか
前回のドイツ大会では、試合を重ねるごとにFW川澄奈穂美(INAC神戸レオネッサ)が成長。決勝トーナメントに入ってからは大儀見からポジションを奪い、ダイナモとしてなでしこの攻撃を活性化させた。 翻って、いま現在のなでしこジャパンはどうか。23人中で17人を前回大会のメンバーが占める一方で、 4年前の川澄のような存在は残念ながら見当たらない。 昨シーズンのなでしこリーグ得点王、FW菅澤優衣香(ジェフユナイテッド千葉レディース)は壮行試合で2戦ともスーパーサブ的に起用されたが、主力組を脅かすような活躍を演じられなかった。イタリア戦の後半45分には縦パスに反応してゴール前へ抜け出したが、シュートを打てずに終わっている。 流れを変える役目を担うドリブラー、FW岩渕真奈(バイエルン・ミュンヘン)は香川・丸亀合宿中に今年2月に痛めた右ひざを再び強打。チームへは帯同するものの、現時点で復帰のめどは立っていない。 こうした状況下で、佐々木監督は世界一メンバーの配置転換を決断した。イタリア戦では本来はボランチの宇津木留美(モンペリエ)を左サイドバックで起用。後半17分からは宮間をボランチへ回し、左サイドバックの鮫島彩(INAC神戸レオネッサ)を左MFとして投入した。 イタリア戦の決勝点をアシストしたのは、左サイドから宇津木が送った高速の低空クロスだった。左右両足でパスを配給できる宮間と左利きの宇津木が左サイドに配置される新布陣を、代表通算53ゴール目をあげた大儀見はこう歓迎した。 「低い位置からでも高い位置からでも、2人からボールを引き出すことができる」 投入された直後に左サイドを駆け上がり、左足のクロスから決定的なチャンスを作った鮫島も「自分も仕掛けるのが大好き。あの時間帯からだったら、自分の持ち味を出せる」と新たな役割を歓迎する。 「宇津木の展開力、鮫島のチャンスメーカー起用を準備したかった」 配置転換の意図をこう説明した佐々木監督は、2人に対して及第点を与えた。あとは細かいコンビネーションを詰められるかどうか。壮行セレモニーで宮間が言及した「完璧な状態」には、残された時間で新しいオプションの完成度を可能な限り高めることも含まれているはずだ。