与党も野党も過半数割れ!波乱の衆院選2024に投じられた民意を読み解いてみる
国民の最大の関心は「裏金」ではない。躍進した国民民主党がつかんでいたものとは?
対して、野党第一党の立憲民主党の「勝ち方」はどうだったのでしょうか。同党の戦略は「裏金追及の一点突破」で、先月代表に就任した野田佳彦代表は選挙期間中に不記載問題を起こした自民党議員の選挙区を精力的に回り、政権交代の必要性を訴えました。 結果、目標としていた「自公の過半数割れ、比較第一党」のうち過半数割れは達成しましたが、比較第一党には及びませんでした。 一方で、躍進と言える結果を残したのが前回獲得議席の2倍以上に相当する28議席を獲得した国民民主党です。党の公式アカウントや代表の玉木雄一郎氏の個人アカウントから発信される動画が人気だったことに加えて、選挙ドットコムが選挙期間中に実施した、利用者と政党の政策の一致度を測定できる「投票マッチング」で最もマッチ率が高い政党でした。 投票マッチングでは利用者の約8割が支持政党がない「無党派層」で、関心の高い政策として挙がったのは「消費税減税」や「少子化対策への財源配分」「年収の壁撤廃」でした。今回の争点として「政治とカネ」ももちろん重要でしたが、生活に近い関心が高い政策へも道筋を示したことが支持拡大に広がったことが伺い知れます。
自民党の負け方や野党勢力勝ち方を比較すると、自民党の敗因として次の3点が浮かび上がります。 一つは、「政治とカネ問題に対する感覚のズレ」です。不記載問題は選挙前から「裏金問題」として追及され続けてきた問題でしたが、その追及が止まない内から公明党が処分を受けた一部の自民議員を推薦したり、自民党から非公認候補の支部への政策活動費を支給したりしたことで、当初は自公過半数も視野に入っていた情勢が悪化する事態となりました。 そしてもう1つは政権与党として「政治とカネ」以上の争点を提示できなかったことです。立憲民主党の一点突破作戦もあってか、裏金問題以外の政策論争は埋没した印象を受けます。後半、苦戦が報じられると自民党は野党勢力には政権を担う力がないと批判するようになりましたが、「自公なら大丈夫」だと思わせる判断材料が十分に提示しきれなかったことは痛手につながったのではないでしょうか。 そして、もう1つが投票層の変化です。選挙のプロや政治記者ですら「今回の選挙情勢の予測は難しかった」と口をそろえる。 今回の投票率は前回の55.93%を下回り、戦後最低水準と同程度になる見込みです。従来であれば、政党支持層は選挙に行き、無党派層は行かない、と言われてきましたが、今回の結果を見る限りでは、政党支持層(主に自民)が選挙に行かず、その代わりに無党派層が投票に行ったことで投票率を(低いながら)維持したという仮説が立てられます。選挙ドットコムが事前に行った選挙区別の情勢調査でも、苦戦している自民系候補は「自民支持層が固めきれていない」点が共通していました。「好き」の反対語は「嫌い」ではなく、「無関心」です。