30代上司を「ふつうやりづらい」50代部下が徹底サポートしたのはなぜ 接待ノウハウ、強気の顧客交渉まで指南
丁寧語、強気メールの出し方まで、教えてもらう
Tさんの言葉通り、Mさんは若手リーダーに欠かせない、ある利点を備えていたと言えそうです。 それは、人生の先輩の懐に素直に飛び込んでいく姿勢。 生来のものか、意識して心がけたものかに関わらず大事な点です。 当時を振り返るMさんの言葉からもうかがえます。 「私は、社会的な素養がないうちにチームリーダーになってしまいました。そこで、言葉使いから何からTさんに手取り足とり教えていただきました。お客さまに外国語で送るメールが失礼な内容になっていないか。『強気のメール』を出すときにいかに柔らかく見せるかなど(笑)。落としどころに持っていくためには、どうすればいいか。経験豊富なTさんのアドバイスは、本当に助かりました」(Mさん) つまり、リーダーだからといって決して年上メンバーに対して高圧的な態度に出ることなく、むしろ自分にない経験を尊重し、その知恵に頼っていたのです。 頼られればメンバーは意気に感じ、力を貸してくれるもの。リーダーの仕事は、メンバー一人ひとりの強みを活かして組織のパフォーマンスを最大化すること。Mさんはそれを心得ていたのです。 「自分にできないことは、何でもTさんに訊こうと考えました。おかげで、ほんとに細かいことまで、いろいろ教えていただきました。会社や仕事のこれまでの経緯を詳しく教えてもらえるのは、とても助かりました。 お酒の席では、ビールはラベルを上にして注ぐんだよとか、日本酒のお銚子は右手で必ず注ぐものとか(笑)。お客様とのコミュニケーションには細かい配慮が大事な時もあるので、マナーも勉強になりました」(Mさん)
必要なのは、自分で試行錯誤して学ぶ経験を積むこと
以上のMさんと2人の先輩とのエピソードには、それぞれから預かった振り返りのコメントがあります。それを紹介しながら、いくつか気づいた点を書き留めておきましょう。 Mさんが入社2年目の大失敗で、先輩のKさんから学んだのは、仕事やお客様に向き合う姿勢といえるでしょう。あえてMさんを叱らなかったKさんは、その時を振り返り、次のように語っています。 「あれは、確かに大きな失敗でした。しかし、大事なのは、何が原因かを確認して、システムを使っているユーザーのサービスをできるだけ早く改善すること。まずそれに全力で取り組むことが、お客様と仕事に対して一番大事です。それをきちんと分かってほしかった。 それに、若手とはいえ大人ですから、ミスが発覚した時点で本人はもう自分の責任だったと反省していますよ。取りたてて言わなくても、真摯に今後に備えるはず。Mさんはそれができる人だと信じていました。将来リーダーになる素養もあった。だから必要なのは、自分で試行錯誤して学ぶ経験をたくさん積むことだったんです」(Kさん)