公明、新代表に斉藤鉄夫氏を選出 多くの中堅が落選、逆風下の再始動
公明党は9日、臨時党大会を東京都内で開催し、衆院選での議席減や自身の落選の責任をとって辞任した石井啓一代表(66)の後任として、斉藤鉄夫国土交通相(72)を正式に選出した。代表代行には竹谷とし子副代表(55)を起用した。石井氏の代表就任からわずか1カ月あまりでの「交代劇」で、党にとっては大きな痛手を負う中での再スタートとなる。 【写真】党大会での斉藤代表と石井前代表 党大会では新執行部の人事案も承認され、西田実仁幹事長(62)、岡本三成政調会長(59)、三浦信祐選対委員長(49)の留任が決まった。党人事とは別に、石破茂首相は斉藤氏の後任の国交相として中野洋昌元経済産業政務官(46)を起用する調整に入っている。 斉藤氏は1993年衆院選で初当選し、現在11期目。2008年に環境相として初入閣し、党政調会長や幹事長などを歴任してきた。21年10月から国交相を務める。斉藤氏は党大会で「(衆院選の)結果を党全体が真摯(しんし)に受け止め、しっかりと総括し、新しいスタートを切らねばならない。原点に立ち返りそこから再出発したい」と表明した。 だが、党の置かれた状況は極めて厳しい。公明は9月28日、15年間代表を務めた山口那津男氏(72)の後継として石井氏を選んだが、この時の人事で重視したのが「世代交代」だった。山口氏は退任時、「政治の世界に世代交代の波が押し寄せている。齢(よわい)70を超えた私としては次の世代にバトンを譲るべきだと決断した」と強調。その後の石井体制は中堅・若手を要職に配した。党中枢を担う人材を育て、世代交代を徐々に進める算段だった。 しかし、衆院選で獲得議席は24議席にとどまり、公示前から8議席を失った。特に大阪では候補を擁立した4小選挙区で全敗し、党内からは「次世代を引っ張る中堅を失ってしまった」(ベテラン)と悲鳴が上がった。党の政策立案を担う部会長などの人事に影響が出るなど党運営にも支障が生じている。 また、来年には公明が重視する都議選や参院選が控えており、低迷する党勢の回復のために失敗は許されない状況となっている。 そのため、党は今回、経験豊富な人物でなければ難局は乗り切れないと判断。党務を熟知し、幅広い人脈、交渉力があるとして、山口氏と同じ年の斉藤氏に白羽の矢を立てた。 衆院選の比例代表は前回21年から114万票減り、過去最少の596万票だった。来夏の参院選で、斉藤氏の真価が問われることとなるが、党内では「衆院選の敗因は、自民への逆風に巻き込まれたことだけではなく、党の戦略ミスもある。きちんと向き合わなければ同じことを繰り返すだけだ」との声も漏れる。 衆院選を受け、連立政権における党の存在感にも変化が生まれている。躍進した国民民主党が公明より4議席多い28議席を獲得し、キャスチングボートを握った。少数与党として政権運営していくには野党の取り込みが不可欠だが、「あまり国民民主に近づきすぎると公明が埋没する」(党関係者)との懸念もあり、野党との距離の取り方に腐心しそうだ。 公明は17日に結党60年を迎える。党中堅は「先輩たちも厳しい時代を経験している。我々もこの難しい時代を乗り切る使命がある」と自らに言い聞かせた。【野間口陽】