モリゾウの想いが込められた進化版GRヤリス発表 パワーアップ&8速ATモデルを追加 新旧モデル比較
新旧比較
新型インテリア 新旧を対比させてみれば一目瞭然で、コックピットは大きく進化した。「(GRヤリスがベースの)レーシングカーは本当に、究極のドライバーファーストで作っている」と齋藤チーフエンジニアは説明する。スーパー耐久シリーズでは、参戦ドライバーの要求に応じてコックピットの改良を繰り返し、操作しやすさと視認しやすさを追求している。その成果を進化したGRヤリスに反映した。 ドライビングポジションは25mm下がっている(助手席側も下がっている)。これは、シートレールの取り付け位置を25mm低くすることで実現した。着座位置が変わるため衝突試験を新たに行なわなければならず少なくないコストがかかることになるが、ドライバーファーストを優先した格好。プロドライバーだけでなく、一般ユーザーからの改善要望が大きかった指摘だったという。 ドライビングポジションが下がったのに合わせ、ステアリング位置も修正。視界の妨げになっているとの指摘を受け、上に突き出していたセンターディスプレイを下げた。センタークラスターの上端位置は50mm下がっているという。合わせてインナーミラーの取り付け位置を後退させることにより、前方視界を改善している。 ディスプレイと各種操作スイッチ類が並ぶセンタークラスターは、ドライバー側に15度傾けた。視認性の向上につながる変更だが、操作性への影響も大きい。左腕を伸ばした際の肩から指先までのリーチの基準である720mm以内にすべてのスイッチ類を収めようとした結果、15度傾けることになったというわけだ。 細かなところでは、変速時の回転合わせを行なってくれるiMT(MT車のみの設定)や横滑り防止機能のVSCのスイッチをシフトレバーの後方から前方に移設した。これは、「バケットシートに交換すると操作しにくい」という市場からの声を反映したものだ。 運転席側にあるパワーウインドウのスイッチの位置も変わっている。進化前は水平に配置されていたが、進化型では手前側に傾いている。ドライビングポジションが25mm変われば、スイッチとの位置関係も変わる。4点式シートベルトでガッチリ体を固定した状態でも無理なく操作できるよう試作を繰り返したそうだ。 進化したGRヤリスでは助手席ダッシュボードのトレイが大きくなっている。ラリー競技では情報を表示するためにここにスマホを置いたり、追加のメーターを置いたりする事例が見られたが、進化前のトレイでは高さが充分にとれていなかった。そこで進化型では市販の追加メーターが収まるサイズを確保。USBのソケット(Cタイプ)も設置され、電源確保の面倒がなくなっている。 クローズドの環境で行なわれた事前撮影&試乗会の会場には開発に用いた試験車が展示されていた。その展示車には変更箇所に番号が振ってあったが、内外合わせてゆうに30を超えていた。取材時間の関係でごく一部についての説明しか聞くことはできなかったが、ひとつひとつに「いいクルマ」にするためのストーリー(改良するに至った背景)があることが確認できた。進化点の数の多さが、開発陣の熱量の大きさを物語っている。 エクステリア エクステリアもコックピットと同様にデザインが変更されている。フロントバンパーのロワサイドは、ラリーなどの競技参加時に損傷した際の復元・交換作業を容易にするため3分割構造に変更された。 また、インタークーラーの前にあるメッシュは樹脂からスチール製に変更。樹脂の場合はサーキット走行でタイヤかす、ラリーでは石が当たると破損してしまう事例があったという。破損してメッシュがなくなったところに再度飛来物が当たると、奥にあるインタークーラーの破損につながって大事になる。メッシュを金属にすれば変形してもインタークーラーの破損に至る可能性は減らすことができる。そう考え、スチールメッシュグリルに変更した。 進化前のバンパーサイド部にはフォグランプが収まっているが、進化型は熱交換器用のダクトとした。メーカーオプションのクーリングパッケージを選択すると、右側にはサブラジエーターを配置。GR-DAT車は左側に水冷のATFクーラーが搭載される。バンパー左側に熱交換器があればGR-DAT車、なければ(フタでふさがっていれば)6MT車との識別が可能だ。 リヤは、バンパー下部にあったバックランプがウインドウ下のガーニッシュ部に移設された。ラリー競技の際に石はねなどで破損する事例があり、その対応である。合わせてバンパーロアは金属メッシュにし、空気の抜けを良くした。 リヤスポイラーに内蔵していたハイマウントストップランプをバックランプの間に移動させたのは、リヤスポイラーを交換するユーザーを考えてのこと。リヤスポイラーを開発するサードパーティーにとっても面倒ごとが減り、追い風となる変更だ。リヤランプは左右をつなげて一文字とし、ひと目でGRヤリスと識別できるようにした。