モリゾウの想いが込められた進化版GRヤリス発表 パワーアップ&8速ATモデルを追加 新旧モデル比較
新開発8速AT=GR-DAT
GRヤリスは「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を合言葉に開発された、TGRのクルマづくりを象徴するモデルだ。2020年1月の『東京オートサロン2020』で世界初公開され、同年9月に発売。発売して終わりとせず、スーパー耐久シリーズや全日本ラリー選手権に参戦し、極限の環境で鍛え続けてきた。その成果を2024年1月の断面で反映したのが、進化したGRヤリスである。 GR車両開発部 チーフエンジニアの齋藤尚彦氏はGRヤリスの開発について、次のように説明する。 「GRヤリスは2020年8月にラインオフしました。その日にモリゾウこと豊田章男会長(当時社長)が私にこう言いました。『これがスタートだよ。ゴールじゃないぞ』と。私たちエンジニア、メカニックがある意味ゴールした気持ちになっていたところを引き締めてくれました。そこからスーパー耐久や全日本ラリー等で鍛え、壊し、直してという作業をプロドライバーやマスタードライバー・モリゾウが行なった結果が、進化したGRヤリスです」 商品力面での最大のハイライトは、8速ATのGR-DATを追加設定したことだ。「より多くの方に走る楽しさを提供し、モータースポーツの裾野を広げたい」とするモリゾウ氏の想いを具現化した格好。G16E-GTS型1.6L直列3気筒ターボエンジンと四輪駆動の組み合わせを楽しみつくす狙いで開発された。AT限定免許のドライバーや左足が不自由なドライバーに対してGRヤリス選択の裾野を拡大する“進化”である。 GRヤリスのATなので、ただ変速を自動化しただけではない。GAZOO Racing Direct Automatic Transmissionの略称であるGR-DATは、「レースでMTと同等に戦えるAT」を目指して開発が行なわれた。減速Gや車速だけでなく、ブレーキの踏み方や抜き方、アクセル操作などを細かく感知し、車両の挙動変化が起こる前に変速が必要な場面を先読みすることで、Dレンジで「ドライバーの意思を汲み取るギヤ選択」を実現したという(SPORTモード選択時)。 いっぽう、パドルシフトやシフトレバーを用いて手動操作するMモードでは、DCTと遜色ない世界トップレベルの変速スピードを実現した。制御ソフトウェアの改良に加え、遊星歯車機構の固定/解放を制御するリニアソレノイドバルブを高応答タイプにし、歯車を固定するのに用いるクラッチ/ブレーキに高耐熱湿式摩擦材を採用するなど、ハードウェアの改良も行なっている。 8速ATを適用する場合はレシオカバレッジ(変速比幅)を大きくして発進加速と高速巡航時の低回転化による燃費の両立を図るのが一般的だが、GR-DATの場合は6MTに比べて2段多い段数を生かし、クロスレシオとしてG16E-GTSのパワーバンドを生かした走りが実現できるようにしている。8速ATのGR-DATは、モリゾウ氏が「ゲームチェンジャー」と期待を寄せる設定だ。