【現金5万円に米、ケーキまで…】福岡県・大任町で"前代未聞のバラ撒き"が行われる「切実な事情」
一人あたり5万円と米5kg
福岡市の中心部から車で1時間ほど。田川市に隣接する、人口5000人程度の大任町(おおとうまち)の施策に県下で注目が集まっている。 【画像】任侠映画と見間違う迫力…! 大任町広報パンフレットの「ヤバすぎる」中身 町長が射殺され、議長が銃撃を喰らい、長らく町議会で一般質問が行われなかったこと。「“ヤバイ”ぜ! おおとう町」のキャッチコピーを添えた任侠映画のようなポスターが「ふるさとパンフレット大賞」を受賞するなど、何かと話題の同町で、新たに物議を醸す政策が実施されるというのだ。 それは“町民一人あたり5万円、米5kgなどを支援する”というもので、これほど豪勢な経済支援を行う市町村は全国的にも極めて稀だろう。ただ、県民の受け取り方はさまざまなようだ。地元紙記者が語る。 「大任町は田川地区のごみ処理施設建設事業を受け入れたこともあって、近接する市町村と比べると圧倒的に財政が潤っています。財政調整基金などの基金残高も51億円と、20年間で3倍近い伸びを見せている。今回の経済政策は、反対意見もあった大型ごみ処理施設受け入れの緩衝、来年3月に控えた町長選へ向けた“バラ撒き”ではないか、と受け取っている住民も少なくありません」 本誌記者は取材で大任町を訪れたことがあるが、役場や道の駅などは洒落た造りで、道路の塗装も行き届いていることに驚かされた。町の規模からは想起しにくいほど、至るところで工事が行われていた。隣町まで車で走ると、その差が際立った。 今回の経済支援の総事業費は2億8000万円に及ぶ。支給されるのは現金や米の他に、納豆やドレッシングなどの特産品も含まれる。また、来年1月以降は誕生日を迎える町民に対して、誕生日ケーキ(直径約18㎝)の贈呈まで行われるというのだ。 ◆大物政治家の存在も見え隠れする その狙いを町長は「明るく健やかな人生を送っていただきたいという願いを込めて」と説明をしているが、ある町議はこう嘆息するのだった。 「コロナ禍にも給付金は支払われましたが、物価高とはいえ今回は平時ですからね……。町長選を見越してのバラ撒きとしか考えられない、というのが率直な感想です。これまでもランドセルの購入支援や、町のキャラクターが描かれたTシャツの配布があって、町民が“物資をもらうことに慣れてしまっている”側面も強い。すでに誕生日ケーキの申し込みも200件を超えていると聞きます。 仮に町議会の中で反対意見を述べようものなら、町民から大ブーイングを受けるから議会では誰も声をあげられない。その一方で隣接する市町村からは『大任町の政策はどうなっているんだ』という声があがっています。当然ですよね」 大任町の永原譲二町長(71)は、“田川のドン”と地元で評されることもある人物。福岡県町村会の会長を4期務め、全国町村会の副会長も務めるなど、県下の首町の中ではかなり強い影響力を持っている。際立つ存在感の裏には、ある大物政治家の存在もあるという。前出の町議が続ける。 「永原町長はかつて武田良太・元総務大臣(56)の選対本部長を務めていたのです。今年の衆議院選挙で武田さんは維新の新人候補に敗れて落選しましたが、地元で“反永原”の声が大きかった影響が強いとされている。永原町長は公共工事の入札結果を非公表にし、町政の問題を取り上げた報道を『偏っている』などと主張して議会での撮影と録音を禁止するなど、強引な手法をとってきましたからね。’21年には町長が20代男性を警棒で脅して書類送検される、なんて事件もありました」 “過度”ともとれる経済支援の狙いはどこにあるのか。役場の総務企画財政課の担当者に聞くと、こう答えた。 「物価高を背景とした、町民の皆さまの生活への経済負担の軽減が理由のひとつです。市の埋め立て施設など、いわゆる“負の施設”と呼ばれる施設建設を受け入れていただいた町民の方々への感謝の意も含んでいます。誕生日ケーキの配布については、おめでたい日を町として応援したいという気持ちも込め、高齢者の方の見守り事業の一貫で行っています。ケーキを届けに直接自宅に伺う際に、職員が高齢者の方の健康状態を確認できるという狙いもあります」 「町長選の選挙対策ではないか」という町議の声をぶつけると、「まったくございません。あくまで町主導で行っている施策です」と真っ向から否定した。 本来であれば、町民にとって臨時収入や物資支援は嬉しいはず。しかし、そう単純に喜べないという事情もまた、大任町には存在しているのだった。
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