20年前の楓ちゃん誘拐殺人「伝え続ける」…定年迎える校長、校舎玄関にほほえむ写真掲げる
児童たちは今、楓さんの写真を見て「楓ちゃんや」「ブランコが好きやったんやろ」などと口にするという。
事件を知らない教員も増え、後藤さんは、誘拐現場を案内したり、当時の校長やPTA会長に講演を依頼したりしている。来年3月に定年を控え、「先生たちに思いを託し、みんなが楓ちゃんのことを伝え続けてほしい」と願う。
今年4月、同小に初めて赴任した教頭の佃拓也さん(38)は「後藤先生の楓ちゃんへの思いは強い。当時の人との関わりを大切にしながら、先を見据えてくれている」と感謝する。「事件から命の大切さを伝えていくのは、この学校にしかできないこと」と話し、後藤さんの取り組みを続けていくつもりだ。
今年の追悼集会は15日に開かれる。後藤さんが、子どもたちに一番伝えたいことは、事件から20年、ずっと変わらない。「『またね』と簡単にあいさつするけど、また会えるのは当たり前じゃない。だから、一瞬一瞬を大事に生きてほしい」
◆奈良女児誘拐殺害事件=2004年11月17日、奈良市の有山楓さん(当時7歳)が、下校途中に小林薫・元死刑囚に誘拐された後、殺害された。小林元死刑囚は同12月30日に逮捕され、殺人罪などで死刑が確定。13年に刑が執行された。