“家具に見える”7万円台セカンド冷蔵庫 新需要つかむ
2024年9月、中国・海爾集団(ハイアール)傘下で家電を製造するアクア(東京・中央)が新しい冷蔵庫「LOOC」を発売した。収納家具に多く用いられる45cmの奥行きを採用し、28Lの冷凍室と44Lの冷蔵室を備える。2台目需要を見据えたセカンド冷蔵庫だ。キッチンで使うメインの大型冷蔵庫ではなく、リビングや寝室での使用を想定し、家具のように見せる工夫を詰め込んだ。 【関連画像】着脱可能な脚を付けたのも家具のように見せる工夫の一つ 「冷蔵庫は壊れるまで使い続けられる傾向にあり、買い換え周期は12、13年と長い。そこで、従来とは異なるアプローチで新たな需要を生み出せないかと考えた」と言うのは、アクア商品本部冷蔵庫企画グループマネージャーの杉本優輔氏だ。 近年、各社が省エネ性能や野菜の鮮度保持といった技術を訴求しているものの、国内冷蔵庫市場は縮小傾向にある。その一番の要因は、「製品の買い替えサイクルの長さにある」と杉本氏は見ている。 セカンド冷蔵庫とは、キッチンで使うメインの大型冷蔵庫に対して、リビングや寝室などで使う小型冷蔵庫を指す。アクアはここに新たな需要を感じていた。 というのも、新型コロナウイルス禍による冷凍食品などの買いだめ需要の増加に対応するため、幅36cmのスリムなフリーザーを2021年7月に発売したところ、ヒットしたからだ。「販売台数は公表していないが、爆売れした」と杉本氏は言う。 ●デザイナーの不満が出発点 新しいセカンド冷蔵庫「LOOC(ルーク)」の開発は、ハイアールアジアR&Dデザインセンタープロダクトデザイナーの渡邊悠太氏が、1人暮らしの時に使っていた小型冷蔵庫への不満がきっかけだ。渡邊氏は当時のことを、「部屋が狭いので圧迫感や駆動音が気になっていた。そこで、奥行き45cmで静粛性の高い、家具のような冷蔵庫のデザインスケッチを描いた」と振り返る。 その後の22年5月、杉本氏と渡邊氏が経営陣にプレゼンテーションする機会を得て、ついに製品化が決定した。 家具のように見せることでインテリアになじむ、LOOCのプロダクトデザインのポイントは3つある。1つが脚だ。脚を付けることで家具調になり、床が見えることで空間が広く感じられる。 2つ目がブランドロゴだ。ロゴを本体とドアをつなぐヒンジにレイアウトし、家電や冷蔵庫という印象を払拭。3つ目が本体正面からハンドルやヒンジ、パッキンが見えないこと。すっきりした印象が、インテリアとの調和を保つのだ。 発表後、予約の段階で予想以上の反響があった。杉本氏は、「冷蔵庫は、年末や新生活シーズンに需要がぐっと高まるのでさらに期待したい」と言う。 販売先は家庭向けに加え、ホテルや介護施設といったBtoB用途も視野に入れ、すでにアプローチを進めている。今後はインテリアショップなど、新たな販路開拓にも挑戦する考えだ。
廣川 淳哉