イタリア人がよみがえらせた山裾の古民家、訪日客が続々 築350年の空き家、担い手探しに手間をかけた理由
「街カン」は、11年に市や塩尻商工会議所、地域住民らの出資で設立された。中心市街地の開発や空き店舗のテナント誘致を手がけてきた“まちづくり”のプロだ。
「空き家活用は、建物単体ではなく、地域全体を見る視点があると良い。建物を売って終わりではなく、その先も見据えてサポートしていきたい」と「街カン」の代表取締役、藤森茂樹さん(68)。
同社では昨年度から市内の各地区を巡り、住民のヒアリングなどを通じて地域の特色を「地域づくり計画」にまとめる活動に取り組んでいる。住民に、空き家が目立つ現状や地域の魅力に目を向けてほしい―と考えるからだ。
洗馬の古民家のような担い手公募には、眠っている空き家のポテンシャル(潜在力)を引き出し、交流人口の増加や地域の活性化につなげたい―という狙いもある。
藤森さんは「どんな街にしていきたいか、住民自らが町づくりのビジョンを持つことが大切ではないか」としている。
所有者の思い入れ、地域活性化 活用担い手の公募は上田市でも
空き家バンクの物件の中でも人気の高い古民家。状態は廃屋に近いものから、良く手入れされすぐ住める物件までさまざまだが、うまく生かせれば、地域の交流拠点になりインバウンド(訪日客)も見込めるため注目度は高い。
こうした古民家の価値に注目し、上田市の空き家バンクでも今年初めて、活用の担い手を公募する企画がスタートした。3月、同市真田町の養蚕農家2軒を会場に、古民家見学の「こみけん。@真田物件見学会」を開き、計25人が参加。今後、地区住民も出席して、購入希望者による利活用案のプレゼンテーションの場を設ける予定だ。
その一つ、古くは養蚕が盛んだった戸沢地区にある築100年超の明治期の古民家は、黒光りするケヤキの大黒柱、書院のある和室、広い土間などが特徴的。近くに住む所有者男性(72)によると、昨年、ここに住んでいた母親の七回忌に親族で集まって話し合い、実家を手放すことを決めたという。男性は「私はこの家の10代目ですが、家を壊すのもしのびない。ぜひ、利活用のアイデアがあれば」と呼びかけていた。
イベントを企画した市住宅政策課の中村多香子さんは、「活用する人のアイデア実現までの支援を、行政、地域全体で続けていきたい」と話している。