ホンダと日産、経営統合の〝深層〟トランプ・ショックと村上ファンドの影 EV補助金撤廃、追加関税も影響か 「トヨタグループと戦える余地」
大変革期突入 国内自動車大手のホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議に入ることが分かった。新設する持ち株会社に2社がぶら下がる形を検討し、将来的に三菱自動車が加わることも視野に入れる。実現すればトヨタグループ、フォルクスワーゲングループに続く世界3位の自動車連合が誕生する。ドナルド・トランプ次期米大統領が関税の強化を打ち出し、自動車メーカーは対応を迫られる。自動車業界は電気自動車(EV)一辺倒ではなく、ハイブリッド車(HV)など多様な技術への投資が求められる大変革期だ。独立路線を貫いてきたホンダと、経営不振が続く日産は生き残りをかけて統合協議入りを決断したとみられる。 ホンダと日産は、今年3月、EV中核部品の駆動装置「イーアクスル」や蓄電池、自動運転向け車載ソフトウエアの開発などで提携の検討を始める覚書を結んだ。8月には提携に三菱自動車も参加していた。 これを統合協議にまで加速させることとなった要因が「トランプ・ショック」だ。トランプ氏は11月、メキシコとカナダからの全輸入品に対する25%関税と、中国への10%の追加関税を行うと表明した。メキシコは日系自動車メーカーの稼ぎ頭である米国市場への一大輸出拠点で、現在の関税負担は原則ゼロだ。 メキシコから1~10月に米国へ輸出した台数は、日産が27万3000台、トヨタ自動車が18万4000台、ホンダも17万4000台にのぼる。トランプ関税が実行されれば生産拠点の移管を含めた新たな投資が必要となる。 トランプ氏はジョー・バイデン政権が打ち出しているEVへの補助金政策を撤廃する可能性もあり、米国市場ではHVなどの優勢が当面続きそうだ。一方で中国市場ではEV化の流れは止まらない。全方位的な戦略が求められる自動車メーカーは、資本力がより重要になっている。 統合協議入りは経営不振の日産を〝救済〟する意味合いも強い。米国市場では、充電の心配がなく日本のお家芸であるHVの需要が急伸し、トヨタ自動車やホンダは収益確保につなげている。一方、EVを優先した日産は、米市場でHVを投入できず、2024年9月中間連結決算の純利益は前年同期比93・5%減と大幅に悪化した。 日産は18年に逮捕されたカルロス・ゴーン元会長時代の拡大路線を修正し、20年に生産能力を2割減らす計画を策定した。業績が回復してきたのを踏まえ、今年3月、3年で販売を100万台増やす計画を示したばかりだったが、今度は業績悪化を受けて11月に世界で9000人を削減する方針を発表し、生産能力の2割縮小も打ち出すなど経営が迷走している。