不謹慎? トランプの「移民がペットを食べている」発言がミーム化、歌やダンスが大ブームに
今月10日に行われた米大統領選挙の候補者テレビ討論会でドナルド・トランプ前大統領が口にした「移民がペットを食べている」というデマが波紋を呼ぶ中、音楽ストリーミングサービスのSpotifyではこの発言にインスピレーションを得た楽曲の配信が始まり、動画投稿アプリのTikTokでは創作ダンスがブームと化している。 ジャズとヒップホップを融合させたダンスは、スプーンで何かを口に運ぶようなジェスチャーをした後、両手を頭の上に置いて犬の耳をつくり、次にミュージカル『キャッツ』よろしく、両手の平を大きく開いて猫が爪を立てるしぐさをまねしてみせる。ヒップを前後左右に動かすアイソレーションやターンが続き、TikTokでバズる動画に特徴的な楽しさと滑稽さがある。 ロサンゼルスでプロのダンサーとして活躍するマーロン・ダビラ・アバロス率いる3人組は、特に洗練されたパフォーマンスを披露。この動画は本稿執筆時点で再生数480万回を数えた。 ダンスのBGMに使われているのは、討論会でのトランプの発言をそのままキャッチーなリミックスに仕立てたものだ。共和党候補のトランプは移民政策に関する討論の中で、オハイオ州スプリングフィールドで移民が地元住民のペットを盗んで食べているという根拠のない主張を繰りかえした。不法移民が米国に脅威をもたらしているとの持論の根幹を強調しようとしたのだ。 「スプリングフィールドでは、彼らは犬を食べている。やってきた人々だ。彼らは猫を食べている。彼らが食べているのは、そこに住んでいる人々のペットだ」との発言は、たちまちミームやジョークの餌食となった。討論から1週間が経過した今もなお、この発言をネタにした投稿は増え続けている。一方、トランプの発言はスプリングフィールドに深刻な影響を及ぼしている。市内で相次ぐ爆破予告について、市長は右派の陰謀論のせいだと非難した。 このデマはもともと、トランプの副大統領候補であるオハイオ州選出の上院議員J.D.ヴァンスがX(旧ツイッター)に繰りかえし投稿していたものだ。ヴァンスは15日に放送されたCNNのインタビューで、自身の虚偽の主張を擁護。スプリングフィールドへのハイチ移民の流入に対する有権者の苦情に注目を集めたかったと釈明した。 ■バズるダンス動画、TikTokが主なプラットフォームに TikTokで投稿動画が爆発的な人気を集め、トレンドとして盛り上がるのは珍しいことではない。しかし、大統領候補がその発端となるのは今回が初めてかもしれない。 目下大人気の「犬猫を食べている」ダンスの振り付けを誰が考案したのかについて、運営サイドから公式の回答は得られていないが、どうやらブームの火付け役はダンサーのセバスチャン・ゴンザレス・モリーナが投稿して再生数1870万回をたたき出している動画とみられる。このダンスは、脚を骨折したプロダンサーも踊り出さずにはいられないほど魅力的なようだ。 英ロンドンを拠点に活動し『マンマ・ミーア』『ヘザース』『ピピン』など数々のミュージカルに出演しているジュリアン・プランケットは、椅子に座ったまま上半身全体を使ったダンスを披露した。骨折が全快した暁には、ぜひ全身バージョンのダンスを見てみたいものだ。
Leslie Katz