不動産と顧客情報の資産を生かして成長へ 西山隆一郎・西武ホールディングス社長
── 2023年4月に社長に就任して1年がたちましたが、現在までを振り返ると。 西山 就任してからの1年はあっという間でしたが、(その前の2年を含む)3年間で捉えています。社長1年目は中期経営計画の最終年度で、この中計を策定したのが21年です。新型コロナウイルスで一番打撃を受けた21年3月期の決算を受けて、アフターコロナを目指して改革して回復する3年間でした。この間、全社員が一丸となって改革に取り組み、構造改革も進めてきましたので、ようやく西武グループは新たなスタート台に立ち、この4月からの24年度からが本当の勝負だと思っています。 ── コロナ禍からの回復の状況はどうですか。 西山 まずホテル・レジャー事業は、当社の事業の中で最も回復が顕著です。需要の回復で特にインバウンド(訪日外国人)の回復の伸びが大きい。もちろん国内のお客様の人流も増えてきていますので、昨年12月の時点で室料収入はコロナ禍前を超えてきています。ホテルは高単価施策を取っており、ブラッシュアップしてきたおもてなし、質を上げたサービスに見合った価格で提供していくことが効いてきています。 ── 海外展開については。 西山 「ザ・プリンス キタノ ニューヨーク」を昨年12月1日にリブランドオープンしました。もともとは「ザ・キタノホテル ニューヨーク」という米国で歴史のある老舗の日系ホテルでしたが、オーナー様にオペレーター(ホテル運営者)として選んでいただきました。今、国内外に80以上のホテルがありますが、今後10年ぐらいで250に増やしていきます。その半分は海外になるので、今回のザ・プリンス キタノ ニューヨークは大きな第一歩であり、これを成功させることが海外展開の橋頭堡(きょうとうほ)になると思っています。 ■沿線の顧客を掘り起こす ── 不動産事業については。 西山 不動産事業は改革途上で、24年度以降に本当の姿になっていきます。事業会社の西武リアルティソリューションズに旧プリンスホテルが持っていた資産などグループ内のさまざまな資産を移しています。その集約した資産をいかに開発するか、資産効率性の高い転換を図っていくかを精査しています。具体的な戦略は5月に発表予定の次の中計で打ち出します。資産をより流動化するために25年4月にアセットマネジメント会社を設立する予定です。資産を流動化して、リゾートや都市の開発に回していく不動産の回転型ビジネスに参入します。