都条例、子供の声“騒音”規制対象除外から3年―保育所設置環境変わったか?
数値規制の対象外になり、求められる保育所と地域のコミュニケーション
「受忍制限」というのは、一般社会で生活環境に障害を及ぼしているか否かで判断されます。いわば、数値ではなく人それぞれの常識や感じ方で決められることになったのです。人それぞれの感覚や常識には、差があります。数値規制から受忍制限に切り替わったことで、かえって45デジベル未満でも「うるさい!」という苦情が出ることになり、余計に保育園や児童館、公園が忌避される傾向が強まってしまうことはないのでしょうか? 「そうした懸念がないとは言い切れませんが、条例の見直しにあたってパブリックコメントを募集したところ、おおむね好意的な意見が多く寄せられています」(同)。 その理由は「もともと住民から苦情を言われたり保育所開設に反対をされない事業者は、条例見直し以前より、室内を遮音性の高い壁や床を用いたり園庭に防音フェンスを設置するなど工夫を怠りません」(同)といいます。 「また、ハード面の整備のほか、地域との融和を図るために近隣住民と親睦を深めるイベント開催や理解を得るための話し合いの場を設けるなどといった努力もしています。条例の見直しは、あくまでもきっかけに過ぎないと考えています。“子供の声”が騒音の数値規制対象外になったことを機に、住民・保育事業者・町内会・行政などがコミュニケーションを密にし、保育所と共存できることを模索することが重要だと考えています」(同)。
条例見直しは子育て環境を考える“一石”
保育所を巡る諸問題は、簡単に解決できるものではありません。同条例の見直しは、子供を持つ世帯のみならず、たくさんの人が子育て環境を考える一石になりました。条例の見直しで、保育所を巡る議論が終わったわけではありません。 2015年の条例見直しで騒音の規制対象からはずれたのは、“子供(未就学児童)の声”や“足音”、“遊具音”、“楽器音”だけです。保育所内に設置されるエアコン室外機や園服などを洗う洗濯機、給食室に設置されるダクトといった設備から出る音は対象外です。また、園児の送迎に使われるバスの走行音なども従来の規制のままです。 これらは、保育所に欠かすことができない付帯設備です。また、条例見直しされた子供の声は、あくまでも未就学児童が対象です。小学校(小学生)には適用されません。 “子供の声”等のほか、今後は、これらについても議論が重ねられることになるでしょう。 小川裕夫=フリーランスライター