堀ちえみ、舌がん完治し「無理だと思った」音楽活動を本格再開 病気を経て人生観に変化
◆ファンからの「ありがとう」に、家族も励みをもらった
――今年デビュー42周年を迎えられました。振り返ってみると、どんな42年でしたか?あの時代にアイドルだった皆さんからは、忙しすぎて記憶がないというお話もよく聞きますが…。 堀:長かったけども、やっぱり早かったかな。あっという間でしたね。私はけっこう記憶に残っているんですけど、共演者だった風間(杜夫)さんには「ずっと寝てた」って言われて(笑)。 でも、いい思い出しか残ってないんですよね。だから続けられるのかな。嫌な思い出しか残ってなかったら、芸能界辞めっぱなしになっていたと思いますし。子育てと一緒でつらいことは全部忘れちゃうんですよね。いい部分しか残ってないから、子どもがいつまで経ってもかわいいと思える。そういう感情と同じかなって思ったりします。 ――堀さんといえば、『スチュワーデス物語』や『スタア誕生』『花嫁衣裳は誰が着る』など大映ドラマも忘れられません。撮影が過酷なことでも有名な大映ドラマで主演を務められ、歌番組にコンサートツアーと、そのハードスケジュールたるや…。 堀:ほかに雑誌の撮影やラジオもありましたからね。病気になった時に“今、この命を生きよう”と思う方向へ気持ちをシフトさせていけたのも、過酷な撮影を乗り越えて培ったド根性のおかげかなとも思います。 先日中学の同窓会があったんですね。小中とお嬢様学校と言われる学校に通っていたのですが、同級生や先生から「のほほんとした環境にいたのに、よくそんな根性がついたわね。芸能界ってもまれるところなのね」って言われました(笑)。でも、もともとの気質がたぶん、自分に負けずぎらいだったのかなとは思います。 ――2019年に発症した舌がんも、今年完治されました。 堀:がんに完治の告知があるなんて思わなかったので、主人と「え? 完治ですか?」って2回くらい聞き返したりしました。完治ということで、この病気の治療はこれですべて終わりました。もうどこにもこの関連の再発もないです。検査も今後は自発的なものとなりますと言われて…。すごくうれしかったです。 ――芸能生活50周年、60代に向けて、これからどんな活動をしていきたいという目標がありますか? 堀:外国のアーティストを見ていると、女性男性と言うのはよくないのかもしれないですけど、女性のパワフルさに刺激を受けます。シンディ・ローパーのライブにも行ったことがありますがすごいですよね。それこそ、70代、80代になっても、ライブで口パクではなく本当に自分で歌っている、それくらいパワーを持ったおばあちゃんになりたいなって思います。 ――その第一歩となる、10月のライブ。どんなパフォーマンスを見せてくれるのか、ライブを楽しみにされているファンの皆様へメッセージをお願いいたします。 堀:昨年のデビュー40周年記念ライブの時に、私ももちろんうれしかったのですが、家族もとてもうれしかったみたいでした。というのは、家族としては私に生きてほしいと思って、手術という方法を薦めたけれども、私が歌うのに苦労して、しゃべるのでさえも満足に伝わらないと落ち込んでいる姿を見て、本当にこれでよかったのかなと迷う気持ちや後悔もあったと思うんですよね。娘は10代だったのに、あのまま手術をせず、厳しい現実を経験させないまま、お母さんの人生を終わらせてあげた方がよかったのかなと時には思ったのかなと。 でもライブでファンの皆様がとってもうれしそうな顔で熱い声援と、本当だったら私が先に言いたい「ありがとう」という言葉を言ってくれて。生きててくれてありがとうというあの言葉が、ファンの皆様にとってもよかったんだ、こういう堀ちえみになってしまったというのではなくて、どんな姿でもお母さんを待っていてくれたんだということを家族も実感することができました。ファンの皆様の声援に、私だけではなく家族も励みをいただいた、そんなライブだったんです。 今回のライブも、いろんな人生がある中で、私のライブを見て頑張って来てよかったなって思ってもらえるような、そんなライブにしたいです。これから先はノンストップでどんどんどんどん歌っていきますので、皆さんも健康に気を付けてついてきてね! そんな思いを届けたいと思っています。 (取材・文:田中ハルマ 写真:松林満美) ライブ「CHIEMI STYLE 2024~Autumn~」は、10月29日、渋谷 duo MUSICEXCHANGEにて開催(ソールドアウト)。10月30日に追加公演も決定。チケットは発売中。 堀ちえみニューEP「FUWARI」は10月29日リリース。