250万円以下で買えるるホンダの新型SUV「WR-V」。タイ開発、インド生産し、逆輸入車として日本導入した意図
日本でも手頃なSUVがほしいというニースは健在だし、HVがほしければヴェゼルやZR-Vという選択肢がある。タイであれば、EVのe:N1、HVの「HR-V」も選べるし、水害などのニュースでガソリン車に注目も集まっている。さらにインドでの販売も踏まえれば、ガソリン車のみは自然な流れだったことがわかる。 次に気になったのが、ワイルドな見た目に反して、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)のみという駆動方式だ。道路環境の悪いインドであれば悪路走破性の高い4WDを求める声もありそうだし、日本でもアウトドアユーザーから一定数の需要はあるだろう。
これについて平村さんは、「インドやタイで悪路走破性を求める場合、ピックアップトラックを選ぶユーザーが多いので、あえてWR-VはFFのみとしました。ただ、最低地上高は、悪路や冠水した道路、また速度制限のために設けられた道路の凸凹を乗り越えられるように195mmと高めに設定しています」という。 平村さんの話から、ユーザーの嗜好にあわせて徹底したシンプル化と、無駄を削ぎ落としながら車両価格を抑えることにこだわってWR-Vが生まれたことがわかる。
■開発チーム内の議論から方向性を見出す 商品企画の段階で「装備がシンプルなクルマって最近ないよね」「手頃なガソリン車が減っているよね」という会話が開発チーム内であり、「価値観や生活スタイルが違っても、一人ひとりに寄り添うクルマ、生活の自由度を高めるクルマをつくろう」と方向性が決まったと平村さんが教えてくれた。 開発チームには、若いタイ人のスタッフ、また女性スタッフも多いそうで、そういった開発者たちの声が反映され、実用性が高く、かつ若者でも手の届くWR-Vというクルマが生まれたといわけだ。
ちなみにプラットフォームには、完全な新規設計ではなく、フロントセクションにコンパクトハッチバック/セダンの「シティ」、リアセクションに3列シートSUVの「BR-V」を組み合わせる形で構築している。 どちらもタイで生産・販売されているモデルで、それらのプラットフォームを組み合わせることで開発期間短縮とコスト削減、さらに生産性の高いクルマづくりが実現したそうだ。これも「お客様に早く届ける」ために考え抜いた方法であり、タイに拠点を置くホンダR&Dアジアパシフィックだからなし得た開発と言えそうだ。