「頭の中が真っ白」になるから緊張はテストの大敵…ではなかった!頭を使う作業は<適度な緊張感>のもとで最もパフォーマンスを発揮する
「メタ認知」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「メタ」とは「高次の」という意味で、つまり認知(記憶、学習、思考など)を、高い視点からさらに認知することを指します。三宮真智子大阪大学・鳴門教育大学名誉教授によれば「メタ認知は自分の頭の中にいて、冷静で客観的な判断をしてくれる<もうひとりの自分>。活用次第で頭の使い方がグッとよくなる」だそう。先生の著書『メタ認知』をもとにした本連載で、あなたの脳のパフォーマンスを最大限に発揮させる方法を伝授します! 【書影】三宮先生が「頭」をよりよくする方法を伝授!『メタ認知』 * * * * * * * ◆緊張しない方が思考力を発揮しやすい? 入学試験などの大切なテストの時にはもちろんのこと、人前での発表などにも、緊張しやすい人とそうでない人がいます。 特に大勢の人の前で発表する際には、人馴れしていない人は緊張しやすいでしょう。私も昔はそうでした。 「緊張して、頭の中が真っ白になる」という表現があるように、過度の緊張は思考力を奪ってしまいます。そこで一般には、緊張しない方が思考力を発揮しやすいと考えがちです。 でも、ある時ふと、「本当にそうだろうか」と考えたのです。
◆リラックスし過ぎてもよくないのでは 実は、幼稚園でほとんど誰とも話さなかった私も、次第に人馴れしてきたせいか、人前での発表にも上がることが少なくなり、さらにはそのうちテストも平気になりました。すると、時折うまくいかないことが出てきたのです。 「もしかすると、リラックスし過ぎてもよくないのだろうか」と思い始めました。かと言って緊張するのもよくないし……。 ということで、バランスをとる、つまり適度に緊張するとよいのではないか、という考えにたどり着きました。緊張し過ぎず弛緩もし過ぎずというのは、けっこう難しいのですが、これがうまくいくとよい結果が得られるように感じます。
◆頭を使う作業は適度な緊張感のもとで最も効果的に 認知活動、つまり頭を使う作業と緊張の度合い(覚醒レベル)との関係については、ヤーキーズ・ドッドソンの法則が参考になります。 頭を使う作業は適度な緊張感のもとで最も効果的になることを、ヤーキーズとドッドソンの二人の心理学者がネズミの学習実験によって発見しました*1。 覚醒レベルが低いと学習パフォーマンスも低いのですが、あるところまでは、パフォーマンスは緊張感とともに高まります。そして、難しい課題の場合には、緊張が度を越すとパフォーマンスは下がっていきます。 一方、課題が単純な場合には、緊張感が増してもパフォーマンスは下がらないことがわかっています(図)。
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