「今すぐ運転士を呼んで謝罪させろ!」もはや電話を取るのが恐怖…バス運行管理者によるヘビーすぎるクレーム対応、その実態
バスの運転士不足が叫ばれる中、路線バスを減便する動きが全国各地でみられています。日本バス協会によれば、12万1000人の運転手が必要なのに対し、現状11万1000人とすでに1万人不足しており、その不足は今後さらに拡大していくそうです。一方、バスの運行管理者の経験を活かし、交通系YouTuberとして活動しているのが綿貫渉さんです。その綿貫さんいわく「電話を取るのが恐怖になるほど、バス営業所にかかってくる苦情の電話は多い」そうで――。 【画像】苦情が発生した原因となった道路とは… * * * * * * * ◆苦情電話 電話を取るのが恐怖になるほど、バス営業所にかかってくる苦情の電話は多い。 鉄道やバスでの苦情といえば、実際に利用している乗客から寄せられるものというイメージがあるだろう。その通りではあるが、バスではそれ以外の人から苦情が来ることも意外と多かった。特に多いのはクラクションについてである。 バス停付近で路上駐車している車にバスの存在に気づいてもらうためにやむをえずクラクションを鳴らすことがあるが、そうすると路上駐車している車のドライバーから「クラクションを鳴らされた、煽(あお)られた」と苦情が入ってしまう。 こちらに非がある内容ではないが、苦情が入った以上は対応しなくてはならない。 効率良く業務を行うためには苦情が入らないのが一番だから、結果として、同様の状況ではクラクションは使わずにやり過ごすのがベストになってしまう。
◆乗用車のドライバーからの苦情 クラクション以外にも苦情は来る。 「おい、さっき浦沢駅近くでお前のところのバスに幅寄せされたんだけど! しかも信号待ちで横に並んで俺のほうを睨んできやがった。ケンカ売ってんのか!」 電話の主は、一般の乗用車のドライバーで、運転士の動向が気に食わなかったようだ。乗用車のドライバーということは、バスの乗客ではない。 鉄道会社で駅員をやっていると、苦情を言ってくるのは100%客であり、客ではない人から苦情を言われることはなかった*1。 しかし、バスの営業所では乗客以外からの苦情も受けることがある。それに、苦情に対応して理解を得たとしても、バスを利用してくれるわけではなく、何の増収にも繋がらない。考えるほどに気分が重くなってくる。 「申し訳ございません。後ほどドライブレコーダーの映像を確認して運転士に指導します」 その場で事実関係を確認してリアルタイムに対応することはできないので、どうしてもこのような回答になってしまう。このため、対応が長期化することが多い。ただ、折り返しの連絡は不要と、そこで対応終了となることもたまにある。今回もそうなるといいなと思っていると、 「指導しますじゃねえんだよ! だいたいお前らは指導しますとか言って実際は何もしてないだろ! お前らの会社の運転士はいつも運転が荒いんだよ! 今すぐ運転士を呼んできて直接謝罪させろ!」 この調子である。言いたいことはわかる。わかるが、この場ではどうにもできない。 「申し訳ございません。あの……、私が責任をもって運転士に指導します」 このあとにどのように対応しようかと考えることしか頭になく、自信なさげに答えてしまったが、 「それじゃあダメだって言ってるんだよ。お前新人か? そんなんで運転士に指導とかできるの?」 弱気な返答が見透かされたようで、どんどんヒートアップしていく。 【*1】とはいえ駅員が言われないだけで、コールセンターでは客以外からの苦情を受けているだろう。
【関連記事】
- 元バス運行管理者「週2回の泊まり勤務に長時間残業、苦情電話…先輩が次々と休職する中でも仕事を続けられたワケ」
- 休憩中も乗客から向けられる「なぜ乗せてくれないんだ」という無言の視線…バス運転士の賃金は大きなプレッシャーと長い拘束時間に見合っているのか?
- バス運転士不足で前日夜まで勤務枠が埋まらないことも…元運行管理者「運転士の割り振りはまるで終わりのない複雑なパズル」
- なぜ西武新宿駅はJR新宿駅からあんなに遠い? かつて存在した「隣接ホーム」計画とは? 延線が2度も失敗したワケと再び動き出した新計画
- なぜ東急電鉄池上線の五反田駅ホームは、JR山手線の高架駅よりさらに高い位置にあるのか?「都会のローカル線」池上線に秘められた複雑な歴史と沿線計画を追う