平野レミ「料理が楽しい」の原点。「フライパンだけで作るパスタ」がダメ出しされた日のこと
プロセスからは想像できない
料理愛好家の平野レミさんがテレビに出ていると、つい手を止めて見入ってしまう。 料理番組は数えきれないほどあり、料理愛好家でシャンソン歌手のレミさんがテレビに出ているのは、珍しいことでもなんでもない。 それでもレミさんが料理している場面に出くわすと、料理ができるまで目が離せなくなる。 なぜだろう。 何を作っているのか。何ができるのか。プロセスからは想像できない料理ができあがることがあるからだ。 【写真】平野レミ「手間と時間を省いたおいしい料理」で、おしかりを受けたことも そんな平野レミさんの新しい料理本が、先月27日に出版された。 『平野レミの自炊ごはん せっかちなわたしが毎日作っている72品』(平野レミ著 / ダイヤモンド社)は、2019年に夫の和田誠さんを亡くしたあと、ひとりになったレミさんの初めての自炊本である。 目次を開くと、楽しい料理名がずらりと並ぶ。 鶏の焼くだけ~ 手間が半バーグ 食べればチンジャオロースー 失敗しない煮魚 れんこんと豚の楽チン煮 缶たんうめぇごはん ほっぽりカレー肉うどん そう、レミさんといえばユニークな料理名とルールに縛られない調理法なのだ。 今でこそYouTubeやInstagramに仰天レシピが溢れるが、それよりずっと前から誰もやったことのない、普通ではなかなか思いつかないような方法で料理を作り続けてきた。 広げた餃子の皮に肉だねを広げた「食べれば餃子」。 丸ごとキャベツをトマト缶やスープと煮た「ドッカーン! 春キャベツ」。 初めてのテレビ出演で紹介すると「視聴者からおしかりの電話が来た」という逸話付き「秘伝・牛トマ」。 レミさんの料理の代表ともいえる、こうしたルール御無用、何にも縛られない料理は、どうやって生まれたのか。 大胆かつ革新的な調理法でありながら、出来上がる料理は日本人には馴染みあるものばかり。その辺りを紐解いていこう。 以下、レミさんへのインタビューでお伝えする。
「気短でせっかち」から生まれた発想
――通常の作り方とはかなり変わった奇抜な発想はどこから生まれるのでしょう。 「こういうものを食べたい」「作りたい」ってイメージしたら、どうしたら一番早くできるかを考えるからかな。 小さい時から気短でせっかちだから、料理もパパッと作って、早く食べちゃいたい。だから一番早くできる方法を考えちゃうの。基礎を習ったことがないのが、私の場合はかえってよかったのかもね。 決まりごとを知らない分、イメージしたゴールに、いかに早くたどりつくかを素直にやるから。 料理のルールは、知らないなら知らないままでもいいんじゃないかな。 あれが食べたい、作ろう、できた、ごっくんしておいしい! 家族と食べるごはんなら、それでいいじゃない。 食べる人の舌がおいしいって言ってくれるなら、テレビとか本とか、よその人が決めたやり方と違っても、作る人が楽しくて、家族が喜んでくれるならOKでしょ。 ――料理のルールがわからないのに、なぜ作り方がわかってしまうのでしょうか。 なんでだろう。一番の早道がわかっちゃうの。 でもそれって、やっていれば誰でもできることなんじゃないかなあ。 ああしてみよう、こうしてみようっていろいろ思いついたことを試すのって楽しいじゃない。 面白いことをやって、できたの全部食べられるんだから、そんないいことないでしょ。 だから私、料理って大好き。