父浩司さん

　２０２０年甲子園高校野球交流試合第４日の１５日、県勢の倉敷商が昨秋の東北大会を制した仙台育英（宮城）と対戦した。先制を許しながらも中盤に好機を着実に生かして逆転。四回途中から登板の永野司投手（２年）がテンポのいい投球でリードを守り抜き、６―１で勝利した。１試合限りの夢舞台で集大成を迎えた選手たちは、最高の笑顔で有終の美を飾った。【松室花実】 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら 　聖地で粘り強い「倉商野球」を見せつけた。チームにとって８年ぶりとなる憧れの土を踏んだ選手たちを、保護者と部員約３００人がスタンドから見守った。 　先発は福家悠太投手（３年）。走者を出しながらも「後ろには永野がいる。行けるところまで行こう」と粘りの投球を見せたものの、四回に先頭打者に二塁打を浴びてピンチを招く。永野投手に後を託したが、相手の勢いを止められず、先制を許してしまった。 　しかし直後の攻撃で、２死から４番・福島大輝選手（３年）が中越え二塁打を放つと、続く田村幸哉選手（同）が「投手を楽させるために思い切り振ろう」と外角直球を中前にはじき返して同点に。さらに、五回にスタンドから手拍子が鳴り響く中で押し出し四球で勝ち越し点を奪うと、六回にも加点。七回には浅野大器選手（同）と田村選手の適時打で３点を奪って突き放した。 　築き上げた堅守と、ひたむきに１点を積み重ねる攻撃が結実した勝利に、選手たちは「世界一のチーム」と口をそろえ、３年間を締めくくった。 　◇父とつかんだ「最後の夏」　倉敷商　原田将多主将（３年） 　「最後に主将としてチームのことを考えて勝利に貢献してほしい」。自身も倉敷商の選手として３２年前の夏の甲子園に出場した原田将多主将の父浩司さん（４９）は、そんな思いを胸にスタンドから息子の勇姿（ゆうし）を見守った。 　原田主将に物心がついた頃から、２人で野球に取り組んできた。仕事が休みの日にはキャッチボールをし、小学校に入ると自身がコーチを務める少年野球チームに入れ、ともに白球を追いかけてきた。小学４年だった８年前の夏、一緒に観戦しに行った甲子園で、原田主将は倉敷商の選手たちに魅了された。「絶対にここでプレーしたい」と父の後を追うことを決め、１年時から主力として活躍。昨秋には主将となり、１月にセンバツ出場が決まると「夢だった甲子園に行けることが本当にうれしい」と話していた。 　しかし、新型コロナウイルス感染拡大を受けてセンバツが中止に。練習も休止になると、原田主将は部屋にこもりがちになってしまった。「ずっと落ち込んだ様子で、どう声をかければいいか分からなかった」と浩司さん。それでも、何とか近所の河川敷に連れ出し、ノックやキャッチボールをして励まし続けてきた。 　思春期に入り、会話は少なくなったが、無料通信アプリ「ＬＩＮＥ（ライン）」で動画をやり取りし、ともに勝利を目指してきた。試合後、「全てを出し切れた。支えてくれた父に今までありがとうと伝えたい」と言った原田主将に対し、浩司さんは「もう息子に、追い越されました」。親子そろって笑顔で最後の夏を終えた。【松室花実】 ……………………………………………………………………………………………………… 仙台育英（宮城） 　　０００１０００００＝１ 　　０００１１１３０×＝６ 倉敷商