スポーツカーの「失われた10年」 ポスト・エコカーで復活なるか
FRスポーツの場合、やはり専用シャシーで訴求したい。どの道ベースにするための量産FR乗用車が絶滅したので、流用を考えればトラックなどの商用車をベースにするしかない。それではイメージ的にも能力的にも難しい。過積載への対応を求められる商用車のシャシーでは重量的に不利を拭えないのだ。そこで専用シャシーの開発となるわけだが、台数が売れないスポーツカーでその開発コストを回収するのが大変だ。 マツダの場合は、専用開発シャシーをOEM供給することで、コンポーネンツの量産効果を狙っている点がミソだ。スポーツカー用コンポーネンツが割高になるのはどこのメーカーでも同じなので、だったらコンポーネンツを競合他社とシェアしてでもコストを抑えましょうという考え方だ。これは実績的に優位なマツダだからこそできる芸当だろう。 ホンダは、3つのモーターを持つハイブリッドシステムで、4輪を別々に駆動・制動し、イン側の前輪で回生ブレーキを効かせながらアウト側の後輪で駆動を掛ける驚愕のスーパー4WDシステムで、自動車が曲がるメカニズムに根本的に革命を起こそうとしている。素晴らしい先進性である一方で、おそらくドライバーはこれまでのメソッドではクルマの状況を検知できないことになるだろう。異次元の速さを獲得することはほぼ間違いないだろうが、それが従来の概念のスポーツカーと呼べるかどうかは未知数だ。 果たして、どのアプローチがどういう成功を収めるのか、それは時間が経てば解ることに違いない。しかしこのように正解がわからず、それぞれに優位を唱える異なるアプローチがあることこそ、コモディティ化の対極だ。やがてこれらのアプローチは市場で淘汰され、共通した「正解」に収斂していくことになる。その過程では失敗作の烙印を押されたクルマが消えていくことになるだろう。 現在は常に過去と地続きだ。過去の幾多の失敗の歴史に学びながら未来は作られていく。2014年のスポーツカー事情がこういう絵柄になっていることを頭に置くと、これから出てくるスポーツカーが何を考えて作られているかが解って一層楽しめるのではないかと思う。スポーツカー百花繚乱の素晴らしい時代に立ち会えることは幸運なことだろう。 (池田直渡/モータージャーナル)