朝ドラで注目、木管事件のお守りに行列 「民法の聖地」黒部・宇奈月温泉
黒部市宇奈月温泉が舞台となり、民法の原則の一つ「権利濫用(らんよう)の禁止」の条文が生まれたきっかけとなった訴訟「宇奈月温泉木管事件」にちなんだお守りが、温泉街で人気を集めている。NHKの連続テレビ小説「虎に翼」で権利の濫用が取り上げられ、毎月1日の頒布時には長い列ができる。ハラスメントから身を守ってくれるという御利益を期待する人もおり、昨今の世相がうかがえる。 宇奈月温泉木管事件は、温泉に湯を引く木管が通る土地の所有者が、法外な値段で土地の買い取りを要求して訴訟に発展し、大審院(現在の最高裁)が「権利の濫用」の言葉を使い悪質な所有権行使を認めなかった。民法の重要な判例の一つで、宇奈月温泉は法曹関係者や法学を学ぶ若者には「聖地」として知られる。 訪れた人が記念に持ち帰れるような品がなかったため、黒部・宇奈月温泉観光局が宇奈月神社などと協力してお土産品を企画。昨年4月、開湯100周年に合わせて「権利ノ濫用除(よけ)お守り」をつくった。 「立場を利用して害を与える人やことを除けてくれる」との御利益をうたい、ハラスメントや嫌がらせなどを避けられるとしている。木管や月、温泉をデザインし、初穂料は1300円。高岡法科大の後藤亜季講師が監修した。 同観光局の石田智章さん(41)によると、頒布開始以降、法曹関係者の間で情報が広まり、弁護士や司法試験に臨む学生が全国から「聖地巡礼」で訪れ、お守りを受け取った。 さらに今年4月、NHK連続テレビ小説「虎に翼」が始まるとお守りを求める人が一段と増え、法律家以外も訪れるようになった。ドラマ内の裁判で「権利の濫用」が登場し、別番組でドラマに関連して木管事件やお守りが紹介されたことも影響したとみられる。 お守りは毎月1日の午前10~12時に宇奈月神社で頒布。同観光局は頒布数を明かしていないが、毎回大勢が訪れ、休日は50人以上の列ができることもある。 今月1日も、県内外の観光客らがお守りを受け取った。家族旅行を兼ねて宇奈月温泉を訪れた大阪府高槻市の弁護士、伊山正和さん(51)は「前から気になっていた。やっと手に入れた」と笑顔。高岡市の50代女性は「『虎に翼』は良いドラマで、お守りの趣旨にも引かれた」と話す。 パワハラなどハラスメントに悩む人やトラブル回避の御利益を期待する人も。滑川市の60代女性は「職場でのハラスメント回避につながれば」と語った。お守りは元日も頒布する。