「1ドル=360円」の固定相場だった時代と同レベルの購買力しかない…「安いニッポン」の根本原因【元IMFエコノミストが解説】
1ドル=360円の固定相場制だった時代と同じ購買力しかない日本円
円の購買力は1970年代に逆戻り 日本円の総合的な力を測る指標として「実質実効為替レート」と呼ばれるものがあります。この指標は物価や複数の通貨間の関係を考慮し、円の実力を測るものです。 先ほど、「日本の購買力」を考える際には、国内と海外の物価を考慮する必要があると述べました。実質実効為替レートにおける「実質」は、まさにその点を反映しています。つまり、「実質」というのは、各国の物価状況を調整したということです。 また、これまで円とドルの為替レートに焦点を当ててきましたが、実際には多くの通貨ペアが存在します。例えば、円とユーロ、円とポンド、円と人民元などです。 経済を為替レートから分析する場合、単一の為替レートだけでなく、為替レート全体の動きをとらえる必要があります。実質実効為替レートの「実効」は、様々な通貨と円の間の為替レートを平均的に出すということです。 [図表]を見てください。ここでは、2020年を100とした指数の形で、円の実質実効為替レートの推移が示されています。 実質実効為替レートが高いほど、対外的な購買力が強まり、海外製品をより手頃な価格で購入できることを意味しています。 2022年10月の実質実効為替レートは73.7と、1970年以降の最低水準まで低下しました。つまり、1ドル=360円の固定相場制だった時代と同じ購買力しかないということです。 その後、実質実効為替レートは若干、上昇しましたが、2023年5月は76.2と依然として低いままです。この数字はピークだった1995年4月の約4割の水準となっています。 宮本 弘曉 東京都立大学経済経営学部 教授
宮本 弘曉