医師「もう退院してくだい」…介護中、医師の発言をスルーする上で知っておきたい”重要ポイント”
2015年に厚生労働省が出した統計によれば、日本人が亡くなった場所は病院、自宅の次に、「介護施設」が多くなっている。治療に特化した病院でもなく、住み慣れた自宅でもない「介護施設」で亡くなるとはどういうことなのか。 【漫画】くも膜下出血で倒れた夫を介護しながら高齢義母と同居する50代女性のリアル 介護アドバイザーとして活躍し、介護施設で看・介護部長も務めた筆者が、終末期の入居者や家族の実例を交えながら介護施設の舞台裏を語る『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』(髙口光子著)より、介護施設の実態に迫っていこう。 『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』連載第27回 『親の介護で「“反省”はしても“後悔”だけは絶対にするな」…「有意義」な介護をするために必要なこと』より続く
医師の判断は絶対ではない
千代子さんの娘さんがそうだったように、医師の判断は絶対で、それにあらがって自分たちの希望を通すことなど無理だと諦めている人もいます。でも、そんなことはありません。あくまでも、最終的に決断するのは本人、そして、家族です。 おなかの痛みをしきりに訴えるお年寄りがいて、家族は、その痛みをやわらげるためと、痛みの原因をはっきりさせるために病院に行ったとします。 検査の結果、がんの疑いが強いことがわかりました。病院の医師は診断を確定するためにさらに詳しい検査をしたい、その結果、どの部位のどんながんなのかが特定できたら、手術や抗がん剤による治療などを提案してくれるでしょう。しかし家族がこれ以上の検査や治療を望まない場合には、 「診察でどこが悪いかがわかっただけでいいです。本人も、これ以上の検査や治療は望まないと思うので、しなくても結構です」 と言ってもいいのです。
入院する前に決めておくべきこと
その場合、 「それなら、もううち(病院)ですることは何もないので退院してください」 と言われるかもしれません。 このとき、もといた施設に戻れるかどうかはとても重要なポイントです。終末期になって、本人や家族は今の状態がどのようなものなのかを知りたくて、短期間だけのつもりで入院したのに、一度施設を出てしまったら、再入居はできないという施設もあるようです。治療を断って病院を退院しても行き場がないために、しかたなく医師の指示に従うという家族もいました。 病院に入院したけれど、回復しないまま重篤化した場合、施設に戻りたいと希望すれば戻れるかどうかを、入居の契約をする前に質問して確認しておくことが重要です。 『「終の棲家」をアピールしながらも退院直後の「衰弱した高齢者」はつっぱねる…介護施設の「身勝手すぎる実例」』へ続く
髙口 光子(理学療法士・介護支援専門員・介護福祉士・現:介護アドバイザー/「元気がでる介護研究所」代表)