大雪時、車の立ち往生に要警戒!引き金の「スタック」はなぜ起こる?抜け出し方や備えは?
新潟県の長岡、柏崎両市などで2022年12月、二日間にわたって大規模な車両の滞留が起きた。雪道のくぼみにはまって車が動けなくなる「スタック」による立ち往生が引き金となり、後続車も巻き込まれることで事態が悪化。両市の主要国道では約1800台が滞留した。大規模な車両の滞留は誰もが巻き込まれる恐れがあり、備えは欠かせない。 【画像】大渋滞が起きる時期は?スタックへの対策、ポイントは? 大規模な車両滞留は、降雪が本格化する12月後半から1月にかけて多発している。国土交通省によると、2013~22年の10年間で全国で計20回起きた=グラフ参照=。12月後半が7回、1月が10回と、この期間で全体の85%を占める。 ◆凸凹の路面→くぼみ深くなる→後続車が詰まる 道路管理者も対応を強化している。国土交通省は2021年、大雪時の対応を「できるだけ通行止めにしない」から「人命を最優先に車両滞留を徹底的に回避する」に改めた。高速道と国道をちゅうちょなく同時通行止めにするとし、不要不急の外出自粛を求める。ハード対策も進めるが、交通量抑制が最も重要との考えだ。 車両滞留の要因となるスタックはなぜ起きるのか。解明に取り組む福井大(福井市)の藤本明宏准教授(46)は車両の重みやタイヤから発生する熱で圧雪路面にできる「くぼみ」が要因と指摘する。 具体的には(1)降雪期は路面状況の悪化により車の停車時間と発進回数が増え、くぼみによる凸凹の路面ができる(2)くぼみの中でタイヤが空転すると摩擦熱で雪が溶け、くぼみがさらに深くなる(3)次第に抜けられなくなる車両が出て、後続車が詰まる-という流れで車両滞留が起きるという。 藤本准教授は魚沼市などでも実験を重ねており「(新潟県を含む)北陸地方では、厚い路面圧雪が日中の日差しや気温上昇で軟らかくなり、わだちができてスタックすることもよくある」と注意を呼びかける。 ◆CO中毒、低体温症、エコノミークラス症候群に注意 冬季の運転で重要なことはいくつかある。道路管理者や専門家が強調するのは「大雪予想時は不要不急の外出を控える」こと。この意識が浸透しないと、車両滞留は繰り返し起きる。 福井大の藤本明宏准教授は「道路情報はこまめに確認を」と喚起する。物流業界では大雪の期間やエリアを避ける日程やルートを検討し、「大雪時は運転を避けることが最善」とも提言する。 とはいえ、予想以上の降雪に遭ったり、仕事で車を出さざるを得なかったりする時もある。スタック対策と、長時間の滞留に備えた準備や心構えが必要だ=表参照=。 まず前提として冬タイヤに履き替え、タイヤの溝の深さが新品時と比べて5割以上残っていることを確認する。その上で藤本准教授は大型車はチェーンを携帯し、圧雪路面を走る時には装着が不可欠と唱える。 空転した場合の脱出法で最も大切なのは「アクセルをゆっくり踏むこと」。深く踏むよりも、タイヤと路面との摩擦力が高くなるためだ。タイヤの下に板や布などを挟むのも有効だ。 抜け出せなければ、スコップなどで傾斜を緩やかにする。シフトをドライブとバックに交互に入れて勢いをつけたり、外から押してもらったりするといい。 車内で過ごす際に最も警戒すべきなのは、排気口が雪で埋もれ、排ガスが車内に入り込むことで起きる一酸化炭素中毒だ。日本赤十字北海道看護大(北海道)の根本昌宏教授(53)=寒冷地防災学=は、排気口が埋もれそうな時はエンジンを切るよう訴える。 この際、低体温症に警戒する必要があり、防ぐには保温、加温、食べる-の要素が欠かせない。寝袋と防寒具、カイロ、水と食料のほか、携帯トイレは最低限必要だと強調する。 情報を得る手段の確保も重要だ。スマホの充電にはシガーソケットからの給電やモバイルバッテリーが有効とする。長い時間座ることでできた血の塊が肺の血管に詰まり、呼吸困難などを引き起こすエコノミークラス症候群にも注意する。根本教授は「水を飲み続け、用を足すことが対策になる」と呼びかける。