「ディズニーランド23個分の樹木」がたった9年間で消滅、杉並区では「約40%減」……「東京23区の猛暑化」に歯止めが効かない「驚愕の背景」
土地の面積に対し、樹冠(樹木の枝葉が茂っている部分)が覆う面積の割合を示す「樹冠被覆率」。 【一覧】大地震&大雨で「災害が起こりやすい」26のあぶない地名 「緑の日傘」とも言われる樹冠が増えると、強い日差しを遮り、熱中症予防や都市部のヒートアイランド現象の緩和などの効果が期待できる。そのため、世界各国の都市では樹冠被覆率を引き上げることに力を注いでいるといわれている。 一方、日本ではその動きに遅れをとっており、東京大学「都市・ランドスケープ計画(寺田徹)研究室」の調査によると、東京23区において、2013年の9.2%から2022年には7.3%まで減っていたことが判明したという。
約2割の樹冠が消滅
今回の調査では、衛星画像のデータから地表の状況を調査する「リモートセンシング」という手法で、樹冠被覆率を算出した。 調査を主導した東京大学「都市・ランドスケープ計画(寺田徹)研究室」の白石欣也氏(博士課程3年)が解説する。 「世界各国の主要都市では、樹冠被覆率を計算した上で、都市環境をつくっていくという取り組みが進んでいます。一方、日本では樹冠被覆率という言葉自体、まだ一般的に知られていません。これまで東京23区全体を対象とした樹冠被覆率の調査はなく、実際にどのくらいあるのか、どの程度増減しているのか、それらを今回の研究で調査しました」(白石氏、以下「」も) 東京23区全体の樹冠被覆率は、2013年からの9年間で1.9%低下しており、12平方キロメートル(東京ディズニーランド約23個分)に相当するという。
23区西部で大幅な減少
下記の表によると、2022年時点で樹冠被覆率が高いのは、千代田区(16.7%)、渋谷区(14.4%)、港区 (12.4%)、文京区(12.3%)が続く。反対に低いのは、墨田区(2.9%)、荒川区(3.2%)、大田区(3.9%)の順となっている。 また、江東区、中央区、荒川区を除く20の区で減少。そのうち杉並区(39.5%減)、練馬区(38.2%減)、世田谷区と中野区(34.7%減)の4の区で大幅な減少がみられた。 23区全体の樹冠被覆率が減少した要因について、白石氏は以下のように説明する。 「樹冠被覆率の減少に影響を与える主な要因として、民間の住宅開発、都市の再開発に加えて、公園や街路などの樹木伐採が考えられます。そのなかでも、樹冠被覆率の減少率がもっとも大きかった場所は、戸建て住宅(40.6%減)。次いで道路(21.4%減)、教育文化施設(18.2%減)、公園(8.3%減)でした」 また、23区内で樹冠被覆率の地域格差も明らかになった。その理由は何なのだろうか。 「千代田区、港区、新宿区、文京区、渋谷区などの都心は、多くの庭園、公園、神社、寺院などが残っていることもあり、樹幹被覆率の減少を押しとどめている傾向がみられました。 ただ、土地利用の40%以上が住宅用地で占められている杉並区、練馬区、世田谷区などは、地価高騰や、地主の高齢化による相続税対策として土地の売却が進み、小さな戸建て住宅が増えていった事情があります」 後編『世界に逆行する日本「20年で国内の街路樹50万本を伐採」、日本人が知らされない衝撃の事実「樹冠被覆率が30%を切ると死亡者数が増える」』では、樹冠被覆率を引き上げるために取り組みを進めているアメリカ・ニューヨーク市の事例など紹介する。
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