日本は「神の国」なのか…日本人が誇る「万世一系」という「ゆがんだ自意識」の正体
「万世一系」と「神の国」
このような考えはけっして、日本人の独りよがりでもなかった。 宋の太宗は、日本人の学僧■然(ちょうねん)に面会したおり、日本について「島夷」にすぎないのに「古の道」を実践していると嘆息したと『宋史』に記されている。 また、中国の代表的な古典『孟子』は、易姓革命を肯定するがゆえに、日本に運ぼうとするとかならず船が難破するともいわれた。上田秋成の『雨月物語』の記述が有名だが、元ネタは明末の随筆『五雑組(ござっそ)』である。 ひとつの家系が絶えずに永遠につづく──すなわち、万世一系。 ここに大きな意味を見出したのが幕末の後期水戸学であり、これを引き継いだ明治の教育勅語であり、昭和の『国体の本義』であった。 現在でも、右派が男系男子にこだわり、選択的夫婦別姓に反対する理由もここに関わっている。本章ではその思想的系譜をたどってみたい。 さらに連載記事<戦前の日本は「美しい国」か、それとも「暗黒の時代」か…日本人が意外と知らない「敗戦前の日本」の「ほんとうの真実」>では「戦前の日本」の知られざる真実をわかりやすく解説しています。ぜひご覧ください。
辻田 真佐憲(文筆家・近現代史研究者)