親が「生活保護」を受けるそうです。自分が「扶養」をしなければダメですか?
生活保護を受ける際、「家族に扶養義務がある」と一般に考えられています。しかし、中には親を扶養することが難しい方もいます。そういった方から「本当に自分が扶養しないといけないのか」と質問を受けることがあります。 そこで、親が生活保護を受ける場合、子としてどのような責任が発生するのかを考えていきます。
生活保護に優先するのは原則扶養義務である
あくまでも原則論の話になりますが、一般的に親族間の扶養義務は、生活保護に優先します。扶養義務とは、配偶者や子、父母や祖父母、兄弟姉妹の他、夫配偶者の父母や兄弟姉妹など三親等以内の姻族(特別な事情がある場合に限る)の中に、自力で生活できない者がいれば、その者を助ける義務のことをいいます。 そして、この義務は生活保護に優先しているため、基本的にはまず生活保護を受ける前に扶養義務を履行してもらうことになっています。扶養義務の履行ができない場合や、それでも生活ができない場合に、初めて利用できるのが生活保護になります。
扶養義務は絶対ではない
扶養義務があるとはいえ、それは絶対的なものではないのが現状です。本来であれば、今回のケースだと、親が生活保護を受ける前に、子である自分が扶養するべきとされるでしょう。とはいえ、申請自体は扶養義務者への相談や承諾がなくともできます。 また、親が生活保護の申請をすると、原則として「扶養照会」が来ます。扶養照会とは、扶養義務者に対して「生活保護申請者を扶養できないか」と尋ねるものです。 倫理的な問題はともかく、この扶養照会に「毎月1万円なら扶養できます」というように、無理して回答する必要はありません。「扶養義務があるし、自分の食費を減らせばよい」と思う必要もありません。扶養義務は絶対ではなく、自分の生活をまずは優先しても問題ないからです。そのため、子である自分が必ず親を扶養しなければならないものではありません。 仮に、年収が1000万円あるなど高年収であった場合でも、それは変わりません。高年収であっても、自身や配偶者、子の生活をまずは守らねばならないからです。実際に余裕があれば扶養するべきでしょうが、切り詰めて今の生活に影響を出してまで扶養する必要はありません。 なお、自分が無理をして「毎月1万円でも親を扶養しよう」と資金援助しても、当事者の誰の負担も減らないでしょう。例えば親に資金援助をした1万円分は、親の生活保護費から差し引かれます。 親が受けられる支援の総額は変わらず、無理をした子にだけ重い負担がのしかかるのです。むしろ、子が1万円の支援を突然にできなくなったとき、親は突然収入が1万円分減ってしまい、生活に困るというリスクもあります。 お互いのためにも、親を扶養すべきか悩むのであれば、無理せず扶養を拒否することもできると知っておきましょう。