<一冊一会>超高級老人ホーム、ADHD…社会を照らす5冊
高級老人ホームはユートピアか?
『ルポ超高級老人ホーム』甚野博則、ダイヤモンド社、1760円(税込) 老後はどこに住むことになるのか……。超高齢社会を迎える今、誰もが一度は考えたことがあるのではないだろうか。数ある老人ホームの中には、入居一時金が4億円を超える「超高級老人ホーム」が存在する。謎のベールに包まれた富裕層の終の棲家は、入居者が悠々自適に過ごせる施設から、広告内容と実情がかけ離れた悪徳施設まで様々だ。元『週刊文春』記者が約1年かけて取材し、都内から福岡まで多数の施設の実態に迫ったノンフィクション。
一人のADHDの世界
『あらゆることは今起こる』柴崎友香、医学書院、2200円(税込) 「頻繁に長時間眠る」「かばんの中身を放置し続ける」など、注意欠如・多動症(ADHD)と診断された著者が、その断片を描く。処方された薬を飲み、36年ぶりに「目が覚めている!」と感じたことから、プール後にクラスメイトが居眠りする高校の教室を思い出すなど、ときには社会に疑問を持ちながら、静かに日常が語られていく。「言語化すればこぼれ落ちるものがある」と記すように、著者の感覚はADHDの一つの側面で、個人によって異なることを忘れてはならない。
WEDGE編集部