名古屋グランパス 光持稜―アカデミーはサッカーと人間性の成長の場―
トップチームで活躍する選手になるためには
ーーグランパスアカデミーからは藤井陽也選手が、ベルギーのKVコルトレイクでプレーしています。彼のようにトップチームで活躍できる選手の特徴はどのような点にあると、光持さんは思われますか。 光持「藤井選手はグランパスアカデミーで、成瀬竣平選手(現V・ファーレン長崎)や菅原由勢 選手(現サウサンプトンFC )とほぼ同世代だったんです。良いライバルが2人もいた、大変恵まれた世代だったんですね。 この3人について、私も彼らがアカデミーにいる頃からいろいろ聞いていたのですが、特に菅原選手は昔からキャラが立っていて一緒にサッカーをしていて楽しい選手だと、アカデミー時代から評判が高かったんです。 彼らを見ていて思うのは、トップチームで活躍するためにまず必要なのは、気持ちの部分なのだろうと思います。特にコミュニケーション能力があること、そしてチャレンジ精神があることが特に重要のようです。そうしたプロとして必要な気持ちの部分を育てることも、アカデミーの仕事として大事になりますね。 また、サッカー選手になることへの貪欲さというのも、トップ選手になるためには必要になります。というのも、今のアカデミーの選手に将来の目標を聞くと、第1希望はサッカー選手になること、第2希望は大学に行くこと、と言う子供が多いんですね。でも、世界を舞台に活躍する選手は、非常に強い意志を持ってサッカー選手になっている人がほとんどです。いわば第2希望などはなく、どうしてもプロサッカー選手になりたい、という人ばかりです。中途半端な思いでサッカー選手になった人は生き残って行けませんから。」 ーー光持さんから見て、5年後あるいは10年後のグランパスアカデミーはどのようになっていって欲しいと考えていますか。 光持「名古屋グランパスのトップチームのスターティングメンバーの半数以上が、グランパスアカデミーの出身者で占めるようになっていて欲しいですね。また、サッカーの能力だけではなく、人間性が育つ場でもあって欲しいとも思います。 また、自分のようにかつてグランパスアカデミーで育った人間が、クラブの運営側として戻ってくる事が普通のことになれば良いな、と思います。グラウンドの中ではHOME-GROWN (生え抜き)の選手は、とても尊敬されますよね。それはその選手がチームの哲学を体現していると、ファンやサポーターから信頼されているからだと思うんです。 クラブの運営側にも、クラブの哲学を理解し伝える事ができる人材が必要です。そんな人材として、HOME-GROWNの人材がたくさん運営に関わる事ができるようになると良いですね。」 名古屋グランパスアカデミー出身ではあるが、一旦クラブから離れた後、現在グランパスで働いている光持氏。彼にとって、グランパスアカデミーは、自身のアイデンティティを形作る一部となっているのだろう。 未来のサッカー選手と社会人を育てる場として、グランパスアカデミーが発展することを何より希望していることが感じられるインタビューとなった。
(インタビュー・文 對馬由佳理) (写真提供 名古屋グランパス ©︎N.G.E.)