ドイツの空飛ぶクルマ開発企業「リリウム」が破産 中国・深圳で商用運航目指すも、事業資金が枯渇
「空飛ぶクルマ」の開発を手がけるドイツのスタートアップ企業「リリウム」は10月24日、ドイツの裁判所に破産手続きを申請すると発表した。資金繰りが悪化していた同社は、ドイツの金融機関から1億ユーロ(約164億円)の融資獲得を目指していた交渉が行き詰まり、事業継続のメドが立たなくなった。 【写真】リリウムと深圳市宝安区政府の提携署名式典 リリウムから融資を打診されたドイツ復興金融公庫は、その条件としてドイツ連邦政府および(本社所在地の)バイエルン州政府による保証を求めた。しかし最終的に、連邦政府(の所管部門)が保証に同意しなかった。
■筆頭株主はテンセント 仮に融資が実現した場合、リリウムはそれを(経営破綻を防ぐための)緊急の資金需要に回す予定だった。その望みが絶たれたことは、経営陣に破産申請を決断させる最後の一押しになった。 リリウムはアメリカのナスダックに株式を上場しており、破産申請の発表とともに株価は暴落。10月24日の終値は0.21ドル(約32円)と、前日終値(0.54ドル=約82円)からの下げ幅が6割を超えた。 同社はドイツ企業だが、その事業は中国との関わりが深い。リリウムの実質的な筆頭株主は中国のネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)であり、発行済み株式の約22%を保有している。
中国では近年、各地の地方政府が空飛ぶクルマを利用した地域レベルの空中交通サービスの導入や、関連産業の誘致・振興を模索している。そんな中、リリウムは2023年6月、広東省深圳市宝安区にアジア地域の統括会社を設立すると発表し、同区政府と覚書を交わした。 さらに同社は、深圳を本拠に広東省・香港・マカオを結ぶヘリコプター航路を運営している東部通用航空とも提携。リリウムの空飛ぶクルマが中国の航空安全当局の耐空証明(訳注:航空機の安全性について国の基準に適合しているという公的な証明)を取得することを前提に、東部通用航空が本格的な商用運航を手がける計画を発表していた。