【解説】123万円で決着か…“103万円の壁”引き上げ 税制改正の与党案が正式決定
日テレNEWS NNN
「103万円の壁」はどうなるのか。20日に正式決定された自民・公明の来年度の税制改正の与党案では「123万円」まで引き上げるとされました。実は、政府・与党は他のプランも考えていたということです。この議論の行方を取材してきた日本テレビ経済部・財務省担当の戸田舜介記者が解説します。 ◇ 日本テレビ経済部・財務省担当 戸田舜介記者 「今回の話は、所得税がかかり始めるラインをどこにするのか、という話でした。現在の基準は『103万円』。国民民主党は『178万円』と主張し、大きな隔たりがありました。『178万円』にすれば 特に地方の税収が減るばかりか、それを補てんするだけの新たな財源も見つかっていませんでした。そのため、与党は物価上昇をもとに『123万円』を提案しましたが、これを一蹴し“妥協点”がないまま案の決定に至りました。ただ交渉次第では、さらなる引き上げが実現していたかもしれないんです」 鈴江奈々キャスター 「さらなる上げ幅というのは、ほかのプランということでしょうか?」 戸田記者 「今回、国民民主党をなんとか説得する必要があった政府、特に財務省と与党は、当初からさまざまな案を用意していました。その中で一番有力だった“裏プラン”が『140万円案』です。ある財務省関係者は『140万円くらいであれば、税収の上振れ分などで対応できるかもしれない』と話していました」
「つまり、いわば『140万円』であれば、今後も税収などが増えれば来年1年はどうにかふんばれるかもしれないと、“妥協”できるギリギリのラインだったともいえます」 鈴江キャスター 「では、なぜはじめから『140万円』と自民党側は与党として、まとめなかったのでしょうか?」 戸田記者 「それは、この議論が『駆け引き』の1つだったからです。与党としては最初から『140万円』という高めのボールを投げてしまうと、国民民主党からそれより高い額を要求されるかもしれないと考え、まずは“低め”のボール『123万円』を提示したというわけです。しかし、国民民主は『178万円』にこだわり、協議はいったん打ち切りになりました」 「税を担当するある自民党幹部も『ほかにも提案できることはいろいろあったのに、退出されてしまった』と国民民主党のやり方に不満をにじませました」 鈴江キャスター 「与党案では『123万円』が決まっているわけですが、国会会期は24日まで延長となり、24日に3党での協議が再開するという情報が入っています。今後は、どうなるのでしょうか?」 戸田記者 「今後も予断を許さない状況です。今回決まったものは、与党案にすぎません。来週に閣議決定される見通しですが、税の制度の改正は年明けの通常国会で本格的に議論されます。20日に3党の幹事長会談であらためて『178万円を目指す』と確認されましたが、将来的に『178万円』に向けて段階的に上がっていくのか、もしくはこのまま『123万円』のまま決着するのか。先行き不透明なまま、年明けにかけて引き続き協議されることになります」 「ある政府関係者は、今回の“いざこざ”を『最近は子どもでも、こんなけんかはしない。恥ずかしい』と突き放しました。今度こそ、財源をどうするかなど、根拠に基づく建設的な議論をしてほしいと思います」