東京都心の空室率は3年ぶりに低下も…大都市のオフィス需要が不安視される理由
東京都心のオフィスビル需要が、再び堅調の兆しを見せている。都心5区(千代田、港、新宿、中央、渋谷区)の3月の空室率は、5.47%と3年ぶりの低水準となった。 TSMC工場進出で半導体バブルに沸く? 注目の熊本県菊陽町から聞こえたタメ息と狂騒 オフィス賃貸仲介の三鬼商事によると、大型ビルの空室で賃貸成約が進んだことが空室率の押し下げ要因となっているとのことだが、このまま空室率は順調に下がっていくのか。 「大企業を中心に分散していたオフィスを大型のオフィスビルに集約する動きが進んでいますが、それによって困っているのが空室率が上がっている中小ビルのオーナーです。空室率6%から5%台に低下というのは大型ビル限定の話です。都心の大規模開発でオフィスの供給が増える中、就労人口の減少も今後の大きな懸念材料です。一方、大阪や名古屋ではその傾向がより顕著になりつつあります」(不動産アナリスト・長谷川高氏) ■都心も就労人口減とリモートワーク浸透が懸念材料 昨今は建築費が高騰し、将来のオフィス需要が見通せないことから、止まっている再開発計画もある。名古屋栄三越は、老朽化により計画されていた複合高層ビルへの建て替えが現在凍結したままに。栄はかつて名古屋最大のビジネス街だったが、昨今はその座を名古屋駅周辺に奪われている。 「トヨタが入居するミッドランドスクエアやJRセントラルタワーズが完成してから、オフィスの中心は栄から名古屋駅周辺にシフトしています。東京一極集中が進む中、一般的に地方都市のオフィス需要は弱含みです。栄といえども、高い建築費に見合う大型オフィスビルの需要を満たすのは難しいのではないでしょうか」(長谷川高氏) 東京都心のオフィス需要は今のところまだ旺盛だが、団塊ジュニアより下の世代の人口が激減しているため、将来的に需要減が懸念されている。 「コロナ禍でリモートワークが浸透した影響からも、長期的には需要が少しずつ減少していくことが予想されます。今後、オフィスからホテルやレジデンスへの転用が増えていくのではないでしょうか」(長谷川高氏) アメリカなどの大都市のオフィスビルでは需要低迷により、空室率の上昇と物件価格の急落が目立ち始めている。日本も同じ道をたどることになるのか。