ARグラスのプロトタイプ「Orion」を発表する、Metaのマーク・ザッカーバーグCEO。

「このデバイスはタイムマシンのようなものだ」 MetaのMark Zuckerberg（マーク・ザッカーバーグ）CEOは、アメリカ・メンローパークで開催した年次開発者会議「Meta Connect 2024」で、新しいAR（Augmented Reality、拡張現実）グラスのプロトタイプ「Orion」を発表した。 【全画像をみる】MetaがARグラス「Orion」の実力。PV詐欺を超えて「ポストスマホ」への続く道のりはこうだ 一方で、彼らの最新製品はOrionではない。10月、同社は新しいXRデバイスである「Meta Quest 3S」を発売する。 Quest 3Sは年末商戦狙いの大きなビジネスであり、強くアピールしたいはずだ。だが、Metaはそのお披露目もそこそこに、今後の方針を説明することに腐心した。 なぜ彼らは、発売を控えた製品よりも未来のアピールに注力したのだろうか？ その狙いを解説する。

視野が広く「PV詐欺じゃない」Orion

Orionの発表は基調講演の最後に行われた。 壇上に立つザッカーバーグCEOにジュラルミンのケースが届けられたが、その中にあったのがOrionだ。 見た目は縁がすごく太いメガネのようだ。 装着するとこんなイメージ。 筆者も実際に動作するOrionをかけてみた。 だが、この中には多数の新技術が組み込まれており、現在「ARグラス」という呼称で売られているものとは使い勝手が大きく異なる。 ザッカーバーグCEOはOrionを「初めての、完全な機能を備えたARグラス」と話す。 その真意は、実機を体験した筆者にはすぐにわかった。視野角が非常に広くて自然なのだ。 現在「ARグラス」という呼称で販売されている製品のほとんどは、視野角が40度から50度しかない。そのため、視野の中央にしかCGが重ならず、「のぞき窓」のような印象を受ける。 透明なディスプレイで周囲が透けて見える「光学シースルー方式」では、画質とコストを両立した形で広い視野のディスプレイを作るのは極めて難しい。 以下のようなデモ映像はよく見るが、この通り見える機器は、ない。関係者の間では「PV詐欺」などとも言われる。 そのため、体験の良さをアピールする機器は、カメラを搭載してその映像を使う「ビデオシースルー方式」を採用している。 アップルの「Apple Vision Pro」が代表格だが、Meta自身もQuest 3ではビデオシースルー方式を採用している。こちらは「PV詐欺」ではない。 Orionは、メガネ型の光学シースルー方式ながら、視界全体でARが体験できる。 MetaはOrionの視野角を70度としているが、実際にはそれより広く感じられた。確かにこれは画期的だ。 しかも、ARグラス自体の重量は決して重くない。 Quest 3などは500g以上あるが、Orionはその数分の1以下である100g程度しかないという。かけてみても確かに軽く、疲れはない。