【宮本慎也】目いっぱいDeNAに対しソフトバンクは余裕?油断?数字上DeNA優利も五分五分
きっと週末の天気予報をハラハラドキドキしてチェックする野球ファンは多いでしょう。今日本シリーズは、DeNAが王手をかけた状況で第6戦を迎えます。DeNAからすれば、2試合で1勝すれば日本一。数字上は有利ですが、ソフトバンクは初戦で7回無失点の有原、第2戦で6回2/3で3失点のモイネロが先発でスタンバイ。正直、五分五分の戦いになると思っています。 ここまでの対戦をまとめると、目いっぱいの戦いをしているDeNAに比べ、ソフトバンクには“余裕”があるように感じています。ソフトバンクの当事者たちは「余裕なんてない」と答えるでしょう。しかし、対外的になぜ余裕があるように思われるのか? 圧倒的に強いのでは? と思われていただけに、この「余裕」が「油断」のように感じてしまう人もいるでしょう。この点が、ここまでの両チームの戦いの差になっていると思います。 DeNAは戦力的に余裕がなく、無理をしてでも必死に戦う必要があります。安定感が抜群だったエース東が、CSファーストステージで左太ももを肉離れ。本来なら復帰まで1カ月はかかる重傷です。奇跡的な回復力を見せたとはいえ、第3戦の先発がギリギリだったと思います。その穴を埋めたのが、初戦に先発して中4日で第5戦も先発したジャクソンです。強力ソフトバンク打線を7回無失点に抑えた2試合目のピッチングは見事でした。 近年は投手のコンディションを最優先に考える起用法が多く、初戦の有原、第2戦のモイネロに中6日を与えたソフトバンクのローテーションが余裕を見せた起用だとは思いません。実際、王手をかけられたとはいえ、万全な調整法をとった2人の先発で2連勝すればいいのです。ただし余裕を見せたわけでなく、油断したのでもないのですが、DeNAの先発事情と比較すると、そのように思ってしまうのも否定できないでしょう。 むしろ気になったのは、第5戦の「1番・笹川」の抜てきでした。第4戦に「9番レフト」でスタメン出場させたのは、将来性を買っての起用でしょう。3打数1安打で結果も出しました。しかし、打撃内容を見る限り、まだまだ未知数な部分が多く、日本シリーズで「1番」を任せる実力はありません。シーズンでは7試合の出場で、打率2割8分6厘、1本塁打。高卒4年目としての成績はいいのですが、優勝に貢献した活躍とは思えません。 個人的に日本シリーズはペナントやCSを勝ち抜いてきた選手で戦うものだと思っています。チーム事情はあるのでしょうが、新人を育成する場所ではありません。大事なのは一緒に戦っている選手たちの気持ちです。他に1番を打てる実力がある周東や今宮の気持ちはどうだったでしょう。ソフトバンクのクリーンアップは強力で、相手チームは1番と2番の出塁はなんとしても阻止しようと攻めてきます。笹川の実力がどうなのか、簡単に判断できないでしょうが、そこを打ち破る実力と経験は不足していると思いました。 目いっぱいに戦うDeNAとシーズン通りに戦うソフトバンク。ソフトバンクがDHのない試合で近藤をどう起用するのか? DeNAは東、ケイをどこで登板させるのか? 天気はどうなるのか? 考えるだけで楽しみです。素晴らしい試合を願っています!(日刊スポーツ評論家)