息子を「世界一の金持ちにする“実験”」の意外な効能 子供には「投資」ではなく「ビジネス」を教えよう
苦笑いで恥ずかしさを隠す彼女に、ボスが優しく声をかける。 「そう思ってくれたんやったら、僕も話した甲斐があったわ。株価が上がるか下がるかをあてて喜んでいる間は、投資家としては三流や。それに、投資しているのはお金だけやない。さっきの二人は、もっと大事なものを投資しているんや」 ボスは七海と優斗を順に見つめてから、ゆっくりと続けた。 「それは、彼らの若い時間や」 『きみのお金は誰のため』151ページより 投資を否定しているのではない。投資することは、資本分配を受け取るという意味では有効だ。しかし、それが本当に社会を成長させているのかは別問題だ。新NISA枠で投資されているお金のおよそ8割が海外に流れているという話もある。
「日本の個人資産は預金ばかりで、もっと投資に回すべきだ」という批判もあるが、こんなに多くの割合を外貨に投資する国も少ない。外貨への投資は言うまでもなく大きな為替リスクもある。 岸田政権の「資産所得倍増プラン」は、聞こえはいいが、国内の成長をあきらめて個人に外貨のリスクを取らせているという現状がある。 国内で資金を有効に活用するためには、誰かの役に立とうと考える意欲的な子どもたちを育てないといけない。それは、投資教育をすることではないはずだ。
そして、大人たちも「預金でお金を眠らせておくのはもったいない」という言葉に安易にうなずかないために、投資の実態を知っておいたほうがいいと思うのだ。
田内 学 :お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家