著しい日本の創薬力低下「有事の際に必要な医薬品が入ってこない」安全保障上のリスクにも直結……石川和男が危機感
政策アナリストの石川和男が9月8日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。日本の創薬力低下について、専門家と議論した。
日本国内の製薬企業による新しい薬を創り出す力「創薬力」が落ちている。内閣官房の資料によると、世界の売上上位300品目における国内製薬企業の創製品目数は1991年に53あったものの2021年には24にまで半減し、今後も減少の一途をたどると予想されている。また、医薬品の貿易収支も悪化が続いており、2022年の輸入超過額は約4.6兆円にのぼった。 この問題について、番組にゲスト出演した新時代戦略研究所理事長の梅田一郎氏は、先進国におけるGDP(国内総生産)と医薬品市場の成長率の比較値を挙げ、いずれの国もGDPがプラス成長するのに合わせて医薬品市場の成長率もプラスに転じているにも関わらず、日本だけがGDPがプラスに転じても医薬品市場の成長がマイナスのままである点を指摘。その要因のひとつに、日本特有の薬価制度があると語った。 梅田氏によると、諸外国では特許期間中の医薬品の価格を下げるというルールは余程の例外でない限り適用されないという。知的財産保護の観点から、価格が維持されるのが当然だという考え方からだ。一方日本では、医療保険で使える医薬品の価格「薬価」が国によって定期的に見直され、特許期間中の薬でも市場の実勢価格に合わせて引き下げられる。公定価格である薬価と市場価格に差が出てきた場合、改定ごとにその差が切り詰められていく独特のルールで「発売当初の想定よりも評価された(より売れた)薬の価格が何度も切り下げられる」(梅田氏)と言及。その結果、日本の医療ビジネスは「おいしくない」という評価に至ってしまい、新薬の開発に二の足を踏む企業が増えてしまうと明かした。 そのうえで梅田氏は「(日本の医薬品市場が)おいしく見えるようにするということが一つ。さらに、日本の中から(創薬力が)育ってくる後押しをするという両方が大事。そのためには、少なくとも世界と同じように経済成長並みには医薬品市場が伸びることを認めなければいけないし、市場の中でどういう風に価格を良いものに付け、成功する企業は成功できるような仕組みを作っていくかが大事だ」と述べた。加えて、政府が今年7月「創薬エコシステムサミット」を開催し、創薬ベンチャーの育成に力を入れていくことを表明。5年間の工程表を作成し、民間企業とともに知恵を出し合うことを始めていると語った。 石川は、日本の創薬力が失われることについて「日本人が口の中に入れて、病気を治したり命を守るための薬を作っている人が日本人じゃありませんというのは残念。製薬産業に優秀な人材が行かなくなったり魅力がなくなる悪循環は、全部外国に頼るエネルギーのように安全保障上の問題になって、有事が起こると日本に必要な医薬品が入ってこないという状況になりかねない」と危機感を募らせた。