豚骨スープのおいしさ、動物性と植物性の違いを可視化 農研機構など
ラーメンでおなじみの豚骨スープで動物性と植物性のおいしさがどう違うのかを、農業・食品産業技術総合研究機構と不二製油グループなどが可視化した。人間の五感を利用する「官能評価」を用い、動物性では「油脂感」、植物性では「ショウガの風味」などの特徴が挙がった。今回の成果は動物性食品に比べて「物足りない」と言われがちな植物性食品を、動物性に近づけるのに役立つという。 植物性食品とは、穀類や野菜、果物、豆類、海藻類、キノコなどの食材と、これらを加工した食品のこと。動物性たんぱく質アレルギーの回避や健康志向、宗教上の理由などで需要が増えている。近年は環境負荷の少ない食料生産のため、肉の代わりに大豆ミートといった代替肉を推進する動きもある。 農研機構は、2021年から不二製油と共同で、動物性と植物性のおいしさの違いを明らかにする研究を始めた。同機構食品研究部門の中野優子研究員と早川文代グループ長補佐らは、野菜や果物、油、うるち米、ヨーグルトといった食品でこれまでに研究実績のある官能評価を豚骨スープでも行うことにした。
官能評価ではまず、評価員となる15人を一般から募集し、味覚や嗅覚が一定の感度を持つようになるまで訓練した。その15人が市販品や業務用のラーメンで使う動物性の豚骨スープ21種と豚骨風にした植物性のスープ12種の計33種について、匂いを嗅いだり食べたりしてその特徴を「香り」や「味」、「食感」などの項目ごとに言葉で表した。 次に、評価員が言葉で表した特徴289語について、特異な言葉を除外したり類似の言葉をまとめたりすることにより、スープの特徴の評価項目となる33語を決めた。33語の内訳は、鼻で感じる「香り」が11、口にした後の「味・フレーバー」が19、「食感」が3だった。評価項目が決まると、評価員7人が主要なスープ12種(動物性7種、植物性5種)を実際に口にして、33語それぞれについて0~150の尺度のどこに位置するかを示し、そのデータを中野研究員らが記録した。