<上海だより>上海カフェ事情:格段に向上するクオリティと越えられない壁
前回は上海の若者たちから人気の武漢路を紹介しました。ここ数年、いやここ1年と言ってもおかしくないくらいに、上海の消費者の文化受容度のレベルが上がってきています。上海が発展する中で多くの日本の方が上海に駐在もしくは出張で訪れているかと思いますが、この1年以内の上海を知っている方からは、口を揃えて本当に消費者が変化しているという声を聞くことができます。
しかし、すべてを正当化できる状況というわけにもいきません。そもそも、上海に限らず今の中国における関税や市場価格の乱調が、無条件に輸入品や贅沢品の価格を上げています。例えば、今後世界最大の市場になると言われているコーヒー市場に着目すると、スターバックスなどのカフェでコーヒー1杯が20元程度(約340円)ですが、ローカルの饅頭屋では同じ価格で1個1.2元の肉まんを16個購入することができます。 さらに、チェーン系ではないオシャレなカフェではコーヒーの価格は最低でも30元(約500円)から40元(約680円)はします。店内の内装や接客などは価格に見合ったレベルに成長してきていますが、肝心のコーヒーの味や、その味を支えるカップやソーサーなどの食器類が非常にお粗末な現実があります。
上海でも有数の高級ブティックやリッツカールトンなどのホテル、オフィスビルが並ぶ南京西路。その西よりに位置する静安寺駅のすぐ側に最近注目されている「AUNN CAFE&CO」というお店があります。2015年夏にオープンして以来、最もデザイン性の高いカフェの一つとして注目されているのですが、その内装は確かに近年のトレンドを押さえ、シンプルで清潔感と解放感に溢れています。
しかし、35元(約590円)で注文したハンドドリップコーヒーのクオリティの低さには正直驚きました。まずカップの色が黒く、コーヒーと同化しており全く美味しそうに見えません。かつ、カップの塗装が所々剥げておりどうも不清潔感を拭えません。日本のまっとうな同額の喫茶店であれば、気の利く店ではウェッジウッドなどのカップとソーサーのセットで出してくれるものですが、上海のほとんどのカフェでは金額に見合った体裁のコーヒーを提供してくれない現実があります。