第91回センバツ/上 ドクターストップ重い判断 救護班医師・柳田育久さん(49)
<第91回選抜高校野球> 球春を告げる第91回選抜高校野球大会が、23日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕する。平成最後の大舞台を陰で支える人たちを訪ね、選手に託す思いを聞いた。 ◇ ガラス窓越しにグラウンドが広がる球場内の一室。大会期間中、医師と看護師による救護班が待機する。負傷者に止血などの応急処置を施すだけでなく、時に重い判断を迫られることもある。 「骨折の疑いがある。試合に出るのは難しい」。大阪市内の診療所に勤め、2007年から救護班に加わる整形外科医の柳田育久さん(49)は過去に2回、「ドクターストップ」を告げたことがある。悔しそうにうつむき、涙をこらえる選手の姿は今も忘れられないが、将来を考えての決断だった。「無理をすれば、高いレベルでのプレーが一生困難になることもある」 柳田さんもかつて甲子園に憧れ、大阪府立三国丘高で野球に打ち込んだ。医師を志したのは高2のころ。肘を痛め、退部した後輩がいた。人一倍の練習量で1年生を引っ張る存在だったのに、けがの後は覇気を失い、別人のようになってしまった。「彼のような球児の力になりたい」。そう誓った。 投手の球数制限がクローズアップされ、選手の健康管理のあり方が問われる中、日本高校野球連盟が加盟校を対象に実施した18年度の調査では、整形外科の定期健診を受けていない学校は57・5%。10年前の56・7%からほぼ横ばいだ。柳田さんは「痛みが出る前に定期健診を」と呼びかけ、今大会もグラウンドを見つめる。