全国学力テスト、都道府県別の公表見直しの声 一部自治体が反発 文科省、見直し検討
■寝耳に水
全国知事会の動きに、文科省幹部は「寝耳に水だ」と驚きを隠さない。過度な競争への配慮から、平成29年度には、それまで小数点以下まで示していた平均正答率を整数で公表する方法に変更するなど対応してきたからだ。
アンケートを取りまとめた全国知事会文教・スポーツ常任委員会副委員長の河野俊嗣・宮崎県知事は文科省による公表方法見直しの動きを評価している。河野氏は11月25日の全国知事会で「さまざまな意見はあったが、知事会の動きが一石を投じた」と発言。全国知事会長の宮城県の村井嘉浩知事は、「ここで一旦は矛を収める。有識者会議の検討の結果に納得いかなかったら、さらにまた意見をまとめて文科省に出す」としており、今後も予断を許さない。(楠城泰介)
■東京学芸大学教職大学院 堀田龍也教授「成績公表は教育改善につながる」
都道府県別の平均正答率を公表してきたのは、かつて自治体ごとの差が大きく、義務教育として是正する必要があったからだろう。公表しているうちに底上げが計られ、その差も縮小している。依然に比べて平均正答率を公表する意義は小さくなったかもしれない。
だからといって、過半数の自治体が現行方法を望む中で、都道府県ごとのデータの公表をやめるというのは乱暴な意見だ。学力分布の現状なども公表すれば教育改善につながるのではないか。
毎年実施する必要があるかどうかも何度も議論されてきた。抽出調査に変更されたこともあったが、多くの学校が実施を希望した。学力を把握して教育改善をしたい学校側のニーズもある。
同時に行われる学習状況調査で分かる情報は宝の山だ。公教育の実態を確認して学習環境を良くする機会を設けることは行政としても望ましい。
今後、調査がパソコン端末を活用して出題・解答する新方式(CBT)になることで現場の負担が減り、結果の公表がスムーズになることも期待される。(談)