英国最後の石炭火力発電所が運転終了 産業革命期に石炭廃止を予言した実業家も
英中部ノッティンガムシャー州ラトクリフ・オン・ソアにある同国最後の石炭火力発電所が9月30日、運転を終了した。これにより、英国は主要7カ国(G7)で初めて石炭火力発電を完全に廃止した国となった。 信じがたいことだが、産業革命の絶頂期に石炭を燃料とする工場で巨万の富を築いた英国の実業家が、早くもこの結果を予測していた。首都ロンドンで1863年に開かれた会議で、英科学振興協会のウィリアム・アームストロング会長は、英国は200年以内に石炭生産国ではなくなると演説したのだ。その上で、石炭は「あらゆる用途で無駄に、湯水のように使われている」と指摘し、環境に優しく安価な発電方法が必要だと訴えた。 会長の演説は好評を博し、進化論で知られる英国の自然科学者チャールズ・ダーウィンは「称賛に値する」と評した。他方で、アームストロング会長の故郷ニューカッスルは、産業革命期に石炭で栄えた町だ。「ニューカッスルに石炭を運ぶようなものだ」(訳注:石炭業の盛んなニューカッスルに石炭を持ち込んで売ろうとする行為から「やっても無駄だ」という意味の英国の慣用句)という表現が現代でも広く使われているように、石炭はいずれ廃れるだろうと予言した同会長の見解は、当時ではあり得ないという思いで受け止められたことだろう。 油圧式クレーンと兵器の製造で莫大な財産を築いたアームストロング会長は、水力や風力、太陽光の利用が未来につながると考えていた。実際、世界初の太陽光発電パネルが登場するはるか以前に「熱帯地方の約4000平方メートルの土地で太陽光を利用すれば、4000頭の馬を約9時間働かせるのと同等の驚くべき力を毎日得ることができる」と試算し、太陽光の直接加熱作用が蒸気機関の完全な代替エネルギーとして利用できるのではないかと予測していた。この演説から7年後、アームストロング会長は英イングランド北部ノーサンバーランド州クラッグサイドにある自宅で、世界初の水力発電計画を立ち上げた。