IS支配はまだ終わらない? モスルに残る3年間の傷痕
変わり果てたアル・ヌーリモスク
モスル西部からチグリス川に向かって東に進むと、ついにそのモスクが姿を現した。 一般的にモスクといえば、カラフルなタイル装飾で仕上げられた美しいイスラム建築で、ミナレット(塔)が空高く伸びている。しかし、いま目の前にあるモスル市民の自慢だったモスクは変わり果てた姿を晒していた。バラバラに吹き飛んだ大きな石の瓦礫がうず高く積もり、行く手をふさいでいる。辛うじて残った屋根のドーム状の部分には英語で「Fuck ISIS 」と書かれている。モスクの隣に立っていた有名なミナレットも跡形もなく崩れ落ちていた。 この街の象徴であり、市民の心の拠り所だった場所はイスラムを名乗るISによって破壊された。モスルを占拠した後の半年ほどは銀行も機能し、給料も支払われ、公共サービスもうまく機能していたという。ISは彼らの主張する理想を実現しようと努力しているように見え、その姿勢を住民たちも信じた。 しかしそれらのシステムも徐々に機能しなくなり、暴力的で行き過ぎた彼らのやり方がエスカレートしていったと住民は話す。そして、モスル奪還作戦が始まって追い詰められると、象徴である神聖なモスクを自ら爆破した。これでは彼らの掲げる大義も正当性も、今となってはただの虚構でしかない。 ISの残党狩りが行われているのだろうか。遠くから聞こえてくる銃撃戦の音を聞きながら、私は虚しくモスクの残骸を見上げた。
残された地雷と仕掛け爆弾
モスルでは表面上、大きな戦闘は終わった。しかし、ISは旧市街地に厄介な物をたくさん残していった。地雷や仕掛け爆弾である。どんな戦争でも、後々まで残る大きな問題がこれである。 7月の初めには、旧市街地を取材していたフランス人のクルーが地雷で吹き飛ばされる事故があった。これだけ街自体が瓦礫(がれき)と化してしまえば、どこに地雷が埋まり、爆弾が仕掛けられているか、その捜索作業だけでも膨大な時間がかかるだろう。警察部隊に同行し、捜索の様子を見学したが、長い木の棒を持って怪しそうなところをツンツンと突ついたりと危なっかしい。本当にそれで発見できるのだろうかと不安になる。 彼らは最低でも15日間は撤去作業にかかるだろうと言ったが、この破壊状況を見て、とても2週間足らずで全てを片付けられるとは到底思えない。一体、旧市街地に市民が戻ってこられるようになるのはいつになるのだろうか。