石破氏の「アジア版NATO」構想はポエムに過ぎない、ASEAN首脳会議で失笑買う恐れ
例えば日米韓や日米比が首脳会談で結束を確認する枠組みがそれにあたる。日米豪印の「QUAD」、米英豪の「AUKUS」もその一環ととらえることができる。 背景にはアメリカの軍事力・経済力の相対的な低下と、ロシアによるウクライナ侵略や中東紛争を受け、アジアに資源を集中させることができないアメリカの状況がある。 石破氏は寄稿で、アジア版NATO創設への道のりとして「現在、日本は日米同盟の他、カナダ、オーストラリア、フィリピン、インド、フランス、イギリスと準同盟国関係にある。そこでは「2+2」も開催されるようになり戦略的パートナーシップの面として同盟の水平的展開がみられる。韓国とも日米は安全保障協力を深化させている。
これらの同盟関係を格上げすれば、日米同盟を中核としたハブ・スポークスが成立し、さらにはアジア版NATOにまで将来は発展させることが可能となる」と説明している。 しかしながら現況の「格子状」の枠組みや、石破氏の言う「日米同盟を中核としたハブ・スポークス」と、加盟国すべてが集団的自衛権行使の義務を負うNATOや、そのアジア版との開きは大きいと言わざるをえない。 そもそも日本が呼びかけたところで話に乗るアジアの国があるのか、甚だ疑問だ。よしんばアメリカがオーストラリア、韓国、フィリピンといった同盟国やインド、シンガポール、タイといった「友人」に働きかけたとしても、同調する国は少ないだろう。
■どこが加盟してくれるのか 本家NATOはロシアという仮想敵がはっきりしている。これに対してアジア版NATOの設立は「中国を西側諸国が抑止するため」と石破氏の寄稿は説明している。 ロシアと欧米との関係と違って、アジアのほとんどの国の貿易相手国のトップは中国だ。米中対立のなかで中国寄りを鮮明にする国がいくつもある。対立に巻き込まれたくないと考える国はそれ以上に多い。反中国で旗幟を鮮明にしているのは現在、南シナ海の領有権争いを抱えるフィリピンぐらいだ。