明日開幕のエアレースで連覇を狙う室屋義秀「ベストを尽くせばドラマが」
「空のF1」とも呼ばれる世界最速の3次元モーターレース、レッドブル・エアレースの第3戦、千葉大会が、明日3日、4日と2日間、千葉の幕張海浜公園の特別コースで開催される。日本人パイロットとして唯一フル参戦しているのが室屋義秀(44)だ。昨年の千葉大会で涙の初優勝。連覇の期待がかかるが、4月に米国サンディエゴで行われた第2戦で2度目の優勝を果たし勢いに乗っての参戦となる。直前会見に臨んだ室屋は、「ベストを尽くせばドラマが生まれる」と決意を口にした。 その表情に余裕と自信が浮かんでいた。と書くと、なんだか白々しいが、関係者の話を聴くと、千葉大会3年目を迎えた室屋は、泰然自若の域に達しているとか。2週間、活動拠点である福島のスカイパークでトレーニングと調整を続け、前日に千葉入りしたが、「完全にレースモード。特別何かの感慨にふけっている時間じゃない」と、悲願の初Vを果たした地に帰ってきても浮ついた様子はない。 その余裕と自信の根拠となっているのが、機体整備を含めたチーム体制の充実である。 「1年目、2年目、3年目と、どんどんチーム体制が良くなっている。ポテンシャルが揃ってきた」 今シーズンから新たに米国のサンディエゴに機体整備の作業場を持つピーター・コンウェイ氏がテクニシャンとしてチームに加わり、サンディエゴ大会では、さっそくその効果が生まれた。 開幕のアブダビ大会では、マシンの冷却機能の不調でオーバーヒートを起こしたが、第2戦のサンディエゴ大会ではその修正に成功して、昨年の千葉大会に続く2度目の優勝を手にしている。室屋の説明によると「マシンを冷却した空気が抜けて出ていく量を減らすと、空気抵抗が減るが、絞りすぎるとオーバーヒートしてしまう。どのチームもギリギリの調整をしてくるところ、そこのバランスがよくなった」ということらしい。 サンディエゴ大会では、まだ機体の総重量が5キロ重かったが、今回は軽量化に成功した。 「1、2秒ロスしていたが、その分を落として、ほぼミニマムな調整ができている」 前大会優勝の流れを母国での戦いに持ち込めるのは大きい。 「(サンディエゴ優勝で)いいサンプルがとれている。それをもう一回繰り返す」 今大会では、約5、6キロの幅のコースレイアウトが、また変更された。観客側から見て左側から進入して右側で2回、左端で1回折り返すのは同じだが、パイロンの設置場所とシケインの場所が変わり、直線の長い高速レースであることに変わりはないが、かなりトリッキーなコースレイアウトとなっている。 オーバーG(10G以上が0.6秒以上続くと失格)を犯すリスクのある通称マクハリターンと呼ばれる右端の折り返しゲートでのバーティカルターン(垂直旋回)と、ライン取りが注目される左側の大きなターンも健在。室屋も「全体に高速型。スピードは(去年より)ちょっと落ちるのかもしれないが、去年よりもGがかかるところが多い。バーティカルターンもある。絶妙なレイアウト」と、新コースに警戒心を強める。 すでにコンピューターによるトラックの解析を終え、どのラインを飛べば、最もタイムを縮められるかの最終シミュレーションも済んだ。 「それを正確に把握して、あとは頭のなかでイメージを作っていく。体を動かしながら、脳みそと筋肉に伝えていく。それをひらすら繰り返している」